足踏みする京工繊、追い上げる阪大と神大【関西合同テスト】

6月29日土曜日、大阪は泉大津フェニックスにて関西勢による合同テストが開催された。スキッドパッド、アクセラレーションに加えて2024年大会相当の周回コースが用意され、各チームショートランでの評価と調整を繰り返していた。参加したのは京都工芸繊維大学、神戸大学、同志社大学、大阪大学、立命館大学の5チーム。この5チームは先週も同じく泉大津でテストをしており、先週の課題と対策の確認をしていたようだ。

2024年から大きくマシンを変えてきた京工繊。大きく変わった箇所はモノコックだけではなく、サスペンションも大きく変更されて特にフロント周りは特徴的な見た目をしている。アームを長く取ることから設計が始まったという2024年の京工繊のサスペンション。エンジニアは「昨年ロールセンタが低くて応答性に課題があって、今年はロールセンタを上げた」「またロールした時のキャンバー変化を抑えるジオメトリーにした」と話す。さらにピッチ方向にサードダンパーを設けてきた。「ASEの路面への対策、現地で調整が出来るアイテムとして投入した」「コーナーダンパーの減衰を上げるとロールにも影響が出るため、ピッチ方向だけに減衰を変えられるようにした」「サードダンパーはコーナーダンパーに比べて高いところで組んできている」とのこと。

ただこのフロント周りの大変更によりセッティングが難航している印象の京工繊。「定常からアクセルを足していくところでアンダーが出て踏んでいけない、今の一番の問題はそこ」「フロントが逃げると逃げっぱなしな状態」「定常もギリギリ」と話すのはエースドライバー。この日、バネ系をメインにセット変更を繰り返して良い方向にいったというが、大きな改善は見られなかった。前述の通り、フロントジオメトリーが変更されて特殊なアーム角を持つマシンだが、実際にはこのジオメトリーの悪さが出てしまうためフロントを固めざるを得ない状況。結果、低荷重のグリップが得られていないようだ。それでもこの日のトップタイム72.6秒でテストを終えている。

京工繊のエンジニアはこの日を振り返り、「今日は割と酷い出来だった」「毎回走行会では1個速くなるポイント『マジックナンバー』を見つけることを目標としていたが、今回はそのポイントを見つけられなかった」「うちで勝とうと思うと、オートクロスとエンデュランスでぶっちぎらないと行けない」「現状のギャップだとワンミスで変わってしまうので、まだ満足していない」とトップタイムで終えたものの苦しい表情だ。

セッティングに迷う京工繊とは異なり好感触が得られた印象の大阪大学。基本的には昨年のキャリーオーバーのマシンだが、速さはすでに昨年以上にあるという。阪大のエンジニア、「先週はチャレンジの意味もあって、バネが柔らかいセットで走らせたがタイム出ないっていう結論になった」「今日はバネを変えてタイムを出せるところまで来た」と手応えを感じている様子。先週はふわふわとしていたマシンだが、この日はある程度動きが落ち着いて見えた。「先週がフロントグリップでガンガン曲がろうというセットだったが、今週はリアを使って曲がろうというセットにしてきた」「最初はやりすぎていたが、ちょこちょこ変えていったら応答性とかも良くなってきた」とドライバーもポジティブなリアクションだ。バネのベースセットを変更して、トーや内圧も細かく変えてこの日のベストは72.8秒で京工繊の0.2秒後ろにつける2番手タイム。エースドライバーは「サスセットについてはそれなりに詰められている」「昨年よりも走れていて、昨年大会時よりも良い状態になっている」「燃調に問題があって、低速中速でロスしている」「次回テストで燃調の問題を解消して、7月20日-21日の関西合同に合わせ込みたい」と語った。

関西勢、速さで京工繊、阪大に続くのは神戸大学。午前中はアクセラで快音を響かせ、そのあとは周回を重ねていた。ドライバーに話を聞いた。「先週はデフにトラブルを抱えていた」「デフロック状態で全然曲がらない状態だった」「今日はデフを新品に交換して持ち込んだ」「昨年から工繊に対しても2秒くらい近づいたので設計の成果が見えたかなという感じ」「フロントサスとエアロの効果が大きい」「フロントダンパーのレイアウトやジオメトリーを改善してきた」「去年は凄いアンダーだったが、今年は凄く良くて、そこは自信を持っていた」と話すように比較的バランスが取れている印象の神大。京工繊、阪大と異なる点は足が良く動くところ。特にトラクションをかけた時のリアのどっしりとした安定感やギャップを通過した時のフロントの収まり等は乗りやすそうな印象だ。「空力的にはまだ上がる余地がある」「タイヤもだいぶ走っているので、新しいタイヤを入れてどうなるか見ていきたい」と語る神大のベストは76秒、この日3番手のタイムでテストを終えた。

シェイクダウンから精力的に走行を繰り返し、泉大津にマシンを持ち込んだ立命館大学。一作年、昨年からのジャップアップが注目のチームだ。この日は主にスキッドパッドでバランスを調整していた印象の立命館、ドライバーを変えながら走行を重ねていた。「先週はずっとアンダーが続いていて、今日持ち込んだ状態でもアンダーが出ていた」「スキッドパッドから始めて、アンチロールバーとダンパーのセットを変更して改善されてきた」「改善してからは周回コースに移行した」「周回コースでもアンダーが改善されている傾向だった」「あと先週からエンジンの調整をして、踏んだところにエンジンパワーが付いてきて思った通りに走らせることが出来た」と確実に前進しているチームのベストタイムは77秒、神戸大学に次ぐ4番手タイムを出した。

この日ライバルが周回を重ねる中、スキッドパッド、アクセラで控えめながら着実にメニューをこなしていた印象の同志社大学。先週の発生した水温問題に対策をしてマシンを持ち込んでいた。「先週エンデュランスシミュレーションをした時に水温問題が顕著に出てしまった」「今日はそこに対策を盛り込んで来た」「結果大丈夫だったので、そこはいい収穫だった」と語るのはドライバー。「セットアップは弱アンダーを目指して内圧、ARB、トー、キャンバーを調整してきた」「タイヤが使い古したものなので、タイムは突き詰められてないがセッティングの方向性は確認出来た」と話す。タイムは80.5秒とライバルに差を開けられているが、確実に前進している印象だ。

この日、午後からフレッシュなタイヤを入れた京工繊と阪大が72秒台で速さを見せるが、それぞれにセットに課題を抱えている状況。これに対してユーズドタイヤで周回を重ねた神大が淡々と距離を詰めている印象だ。昨年までの状況と少し変わって、速さの面では各チームの差が詰まってきた関西勢。7月20日-21日の関西合同でばちばちのタイム合戦が見られるか、期待したい。

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