関東でもトップチームが苦戦、強豪 工学院に日工大と農工大が接近する【茂木合同テスト】

7月6日土曜日、モビリティリゾートもてぎのマルチコースにて自動車メーカー主催の合同テストが開催された。工学院大学、日本工業大学など関東勢に加えて東北大学もこれに参加した。今年は全長400mほどのコースが用意され、昨年大会のコースから1~3コーナー、終コーナーが採用された。ドライバーズミーティングでは運営サイドからチームに対して「大会会場のASE(Aichi Sky Expo)の路面は細かい、逆にここ(茂木マルチコース)の路面は荒い。その違いに理解してセッティングや練習をしてほしい」と路面に違いに触れながら、大会に向けた準備促す発言が出るなど支援する自動車メーカー、運営サイドも熱が入っている様子だ。

昨年のフレームを継続使用し、今シーズン早々に走行テストを開始した東北大学はここでも順調にテストを進めていた。難なくブレーキテストを通過すると、コースにマシンを出した。慣熟走行の速度域では旋回に癖は無く、スムーズに曲がっている印象。ただ速度を上げていくと少しリアの弱さが目立ち始めた。ドライバーは「低速域でのアンダーステア、高速域の安定感が足りないことが課題」「ロングコーナーでリアのふらつき、リアがついて来ない」「スラロームで前半はコントロールしやすいが、後半でRが大きくなって不安定になってしまう」と話す。これに対し、ダンパーセットを変更して効果を見ていたようだ。「今年、チームとして初完走を目指している」「出来る限り乗りやすいマシンを目指していく」と初完走に向けて意気込みを語った。

この日唯一の28秒台でトップタイムを出したのはやはり工学院大学。ポジションこそ堂々のトップだが、テストの内容については苦しいコメントが返ってきた。チームは「今日はスラロームの過渡と周回のRに合わせて内圧やダンパーを全部取るつもりで来たが、あまりにも(マシンの)動きが悪すぎる状況」「ドライバーのスキルも追いついていない状況で車両がどんな状態なのかを見るところから始まっている」と話す。動きを見ていても昨年のようにマシンの自転運動がスムーズに出ていない様子。シケインでは深く舵を当てるのだが、リアの回り込みはそれに遅れるような動き。スラロームでも舵角が小さいところはそこまでギクシャクはしないが、舵角が大きくなるところでは悪さが出てくる印象だ。「スキッドパッドとスラロームでほぼ弱アンダーな状態で持ち込んだが、コーナーの入りが想定外な動きをしている」「もっとパキっと入るのを想定していた」と想定外の出来に困惑している様子だ。今回、工学院は企業からの支援を得て大型のロガーを積んで走行していた。それによる収穫は合ったようで「ロガーを見てドライバーのステアリング操作に課題を見つけることは出来て、それは収穫」と話す。「でもまあダメ、このペースじゃあ京工繊には勝てない」と半ば放心状態でコメントを終えた。

日本工業大学は今年も変わらず安定感のあるマシンを出してきた。東北大学同様に順調に周回走行に入ると慣熟走行からスタート。徐々にペースを上げ、ドライバーを変えながら周回を重ねていた。昨年の茂木テストではフロントに深いグレーニングを作っていたが、今年は改善されていた印象。内圧が上がらない、グリップが得られていないライバルがいるのに対してこの日の日工大のタイヤはしっかりと溶けて、見た目からも粘着力を感じるような表面をしていた。走行中も路面とタイヤの関係は良く、接地感が高い。ドライバーは「茂木に来る前にはスキッドパッドとスラロームでサスペンションや内圧の調整をしてきた」「今回はタイヤ内圧を数パターン変えて走行した」「昨年の内圧から高い側、低い側とそれらを組み合わせたパターンを試した」「高い側だと高速走行中のグリップが安定して出ている」「(マシンとしては)すごく乗りやすい乗り味になっていると思う」「タイムも29秒前半までいって、良い感触が得られた」と好印象な様子だ。

この日、想定外のところから存在感を示して来たのは東京農工大学。直前にシェイクダウンを終えてはいるが、ブレーキテスト程度でセッティングは真っさらの状態で茂木テストに持ち込んだという。走り出しは低速コーナーでのアンダーステアに対してセットを変えて効果を見ていた様子。レーク(車高)から始まって、キャンバー、ARB、内圧と広い範囲で調整をしていた。「今日は最初からサスのセッティングをすると決めて来た」「低速の問題(アンダーステア)は改善されたが、今は切り返しでマシンが重く向きが変わらないのが課題」「スラロームでヨーが遅い」「設計上極端なステアリングジオメトリーになっていて、舵角が大きいところで乗り難さが出ている」とのこと。セッティングの課題を残し、更には最後フロントアームが変形して走行を断念してテストを終えているがドライバーの表情は明るい。「チームとして全体で動いてくれて、いっぱいセットを試すことが出来た」「(チームの動きが良いことに)びっくりした、今日来て1番良かったと思うところ」「めちゃくちゃ嬉しかった」とマシン以上にチームの動きに手応えを感じている様子だ。タイムは29秒前半をマークした。

テスト前の段階では工学院大学がライバルを1秒以上離して終わるかと思われた茂木テストだが、蓋を開けて見れば工学院大学の1秒以内に日本工業大学、東京農工大学が入る接戦。奇しくも先日関西で京都工芸繊維大学に対して大阪大学、神戸大学が接近した状況に似ている足踏みする京工繊、追い上げる阪大と神大【関西合同テスト】 -学生フォーミュラ 学生フォーミュラのコラムサイト|KAERU JOURNAL (inokaeru.com)。全体を見れば、残念ながら関西勢のほうが元気に走るチームが多くチームの動きも良い印象。8月のエコパテストまで立ち位置が見えない状況が続くが、関東勢の巻き返しに期待したい。