名工がEVでも速さを証明、北大が驚きのクラストップでICV席巻【学生フォーミュラ2025】

学生フォーミュラ日本大会2025の4日目午後、注目のオートクロス午後セッションが行われた。午前中とは異なり路面は完全ドライ。ただし空港方面に重い雲が広がり、チームは雨雲の動きを気にしながらのオペレーションとなった。特に午前中に走行したチーム(JilinEV、暫定トップを奪う圧巻の64秒台【学生フォーミュラ2025】 -学生フォーミュラ 学生フォーミュラのコラムサイト|KAERU JOURNAL)はセカンドレーンからのスタートで待たされることが分かっていたため、上位チームは走行開始の1時間以上前から長い列を作っていた。15時30分に始まったセッションは、まず午前中に走っていないチームをコースに送り出し、その後セカンドレーンのチームへと移った。セカンドレーン先頭には名古屋工業大学と京都工芸繊維大学が並び、この2台がコースへ向かった直後、千葉大学や九州工業大学といった午前に走っていない強豪勢も続いた。振り返れば、セッション開始から30分後のこのタイミングが午後の山場となった。

この集団の先頭でアタックに臨んだのは名古屋工業大学だった。昨年はエース川合を乗せてセカンドレーンに並んだものの、時間切れで走れなかった。その悔しさもあり、今年はセカンドレーン先頭にマシンを並べたとみられる。走り出しは65秒台。2周目に明確にスイッチを入れ、鋭さを増した走りで圧巻の63.746秒を叩き出した。文句なしの全体トップタイムだった。チームを牽引してきたエンジニア松井は「戦略としてバッチリ決まった」「前日の夜に何パターンか出して、朝路面を見て決めた」「周りの動きは見ずに自分たちのことに集中しようというところで動けた」と語った。チームが用意したマシンと戦略に応えた川合も「午前中に荒井くん(セカンドドライバー)がいい仕事をしてくれて、自分としてもパイロン跳ねようがこれで最後だから、悔いがないように走ろうと思った」「ここまでいろんな先輩方に教えてもらったこと、仲間と準備してきたことを頭に入れて走った」「今までのオートクロスの中で1番の走り、全力を出せたと思う」と振り返った。総合優勝を成し遂げた先輩の影がちらつく中、EV転向後苦しいシーズンが続いてきた名工。松井は「本当に感無量」「5年前、カーナンバー1で迎えた記録会では散々な結果に終わっていた」「EVに移行するところでも苦労があって、昨年もオートクロス失敗してきた」「これでやっと総合優勝した先輩に肩を並べられたと思う」と語った。ここで一つの区切りがついたのは間違いなく、その根底には積み上げられた名古屋工業大学のフィロソフィーがあった。おめでとう。

EVクラスで名工がトップを奪った一方、ICVクラスでは北海道大学がクラストップを獲得した。名工ら上位勢が走った直後にコースインした北大は、1周目を65秒台で入ると2周目に64.808秒をマーク。会場と実況解説がどよめく驚きのタイムだった。決して下位チームではないが、事前テストでは関西勢や関東勢が目立つ中、注目度が高くなかっただけにインパクトは大きかった。チームリーダーは「想定以上のところに来た」「昨年のマシンと比べて確実なステップアップを感じていた」「ライバルが速くなっているのも分かっていた」「大会と同じコースを再現できず比較が難しい中でどうなるか不安もあった」「ICVコースレコードを獲れるとは思っていなかった」「まだ現実感が湧いていなくて、嬉しいという感想しか出てこない(笑)」と語った。午後にアタックしたエースドライバーも「雨もあったし、どのタイミングでアタックするか悩んだ」「朝、路面が乾いていく中で最初にセカンドドライバーでタイムを残せたのは良かった」「午後は後半天気が崩れるのが分かっていたのでセカンドレーン前方に並ぶのが重要だった」「名工が最初に並んだ時にすぐ反応できたのは大きかった」「すごい緊張した、心臓ばくばくで(笑)」「セカンドドライバーとの差も分かっていて64秒台はいけると思っていた」「その通りのタイムを出せて良かった」「自分を上手くコントロール出来て良かった」と振り返った。この躍進は2012年大会の京都工芸繊維大学を思い起こさせる。当時、上智大学や横浜国立大学が強さを見せる中、ノーマークだった京工繊がトップタイムを記録した出来事と重なる。学生が作り上げたマシンは壊れたり止まったりと「学生イベントらしさ」が強調されがちだが、今回の北大のように速さを競う中で起きる予想外の展開こそがドラマであり、これがオートクロスの醍醐味だった。