不運な雨の中でも、際立つドライバーの腕とマシンの素性【学生フォーミュラ2025】
学生フォーミュラ日本大会の最終イベントを飾るのは、オートクロス上位6台によるエンデュランス・ファイナル6。今年、その舞台に立ったのは名古屋大学EV、名古屋工業大学EV、千葉大学、大阪大学、工学院大学、そして北海道大学の6台。大会最終日の午後に始まった走行は、開始10分前から小雨が降り出し、瞬く間に路面を黒く濡らした。しかしスタート時には雨が止み、Aichi Sky Expo特有の乾きの速さでドライパッチが見え始める状況となった。そんなコンディションの中、名古屋大学EVと名古屋工業大学EVが先陣を切って走行を開始した。両車が無事に完走すると、千葉大学と大阪大学がコースイン。前半スティントを終え、ドライバー交代から3周目に入ったところで再び大粒の雨が降り始め、オレンジボールが提示される。千葉と大阪はピットへ戻り、ウェットタイヤへ交換。ここから「大阪大学・中田劇場」が幕を開けた。




土砂降りとなったコースは全域に水が浮き、ウェットタイヤの排水性能が限界に達する状況。それでも中田は、水を得た魚のように軽やかにコーナーをクリアしていく。特にダブルヘアピン1個目は圧巻だった。高速の右コーナー連続区間からリアを暴れさせながらも加速し、ダブルヘアピンに向けて早めにマシンを横へと振り出す。深い角度を持つ車体は完全に中田の支配下にあり、彼の狙い通りに滑りを止める。そのまま迷いなくアクセルを開け、次のコーナーへ加速していく。同じコンディションを走る千葉大学も、このペースにはついていけなかった。中田はカート時代から雨に強く、「雨好き」で知られていたという。名城大学の高口はこう語る。「カートの時から雨が得意で、みんなが様子を見て止めている時も最後まで走っていたし、一番にコースへ出て行くようなドライバーだった」。ドライ路面では曲がらないマシンを振り出して曲げていた中田だが、雨になってそのスライドコントロールが存分に発揮された。大阪大学と千葉大学はこのフルウェットを走り抜き、エンデュランスを完走した。



続いて大会最終日の最終枠、工学院大学と北海道大学が走行を開始。しかし厚い雨雲の接近により、大会史上でも珍しい雷による競技中断が宣言された。数十分の待機を経て、雨が弱まったところで走行が再開された。
工学院大学はウェットタイヤを装着してコースイン。序盤から速さを見せたが、挙動は大阪大学とは異なり、意図的な振り出しというより唐突にリアが出る印象を与えた。それでもドライバーの操作に応じてマシンが踏ん張り、素性の良さを感じさせた。ドライバーは「雨本当に大変でした」「運営の判断で少しスタートを待ってくれたのは良かったが、後半乾いてくれたのも助かった」「スタート前は最後まで内圧を悩んだが、最後はドライアップを想定して低めで出した」「後半オーバーヒートはきつかったが、ウェットなりに速く走れたと思う」「ドライセットの前後バランスでも感触が良かった」と語った。結果はエンデュランス8位。昨年は車検不通過に終わったが、今年はクラス12位まで順位を押し上げた。



北海道大学も同じくウェットタイヤでコースへ。前半は工学院と同等のペースを維持した。工学院がややリアが軽い挙動を示したのに対し、北大はリア寄りのバランスが印象的だった。もともとドライから動きのあるセットだったこともあり、雨でも安定感を発揮。ただし低荷重コーナーではフロントの入りが甘く、路面の水量が減るとその傾向が顕著となった。エースドライバーは「大変でした」と切り出し、「雨になったがドライのセットのまま出した」「エンジニアは(内圧が)高かったかもと言っていたが大きく外れてはなかった」「工学院のタイムを見てプッシュしたが、一歩先に行かれていた」「例年の北大のマシンと比べ物にならないほど良くて、雨でも安定していた」「ブレーキを残して入るとマシンが自然に曲がっていった」「気持ちよく走れるマシンだった」と話す。また今シーズンのマシン作りにも触れ、「根拠を積み上げて作ったことが自信につながったし速さにも結びついた」「チームとして何段階も上がった感覚がある」「このまま流れに乗って後輩たちには他チームを驚かせる走りをして欲しい」と来年への意欲も語った。結果はフルウェットにも関わらずエンデュランス14位、クラス7位。北海道大学は大きな飛躍を遂げた。


