路面干渉をどう確認するか、難しいジャッジ【学生フォーミュラ日本大会2024】

会場をAichi Sky Expoに移して最初の大会となった学生フォーミュラ日本大会2024。新しい会場が発表された直後から動的エリアのかまぼこ形状と路面干渉のリスクについてはチームや関係者の中でも心配されていて、事前に路面形状の情報が出されるほどだった。というのも学生フォーミュラの場合、レギュレーションでグランドクリアランスについて明記されていて路面干渉は競技無効とされるからだ。2023年大会のオートクロスで大阪大学がタイム抹消となった理由もこれだ。この大阪大学の判例もあり、今年の大会においてマシンの地上高と路面干渉はチームが最も神経質になるポイントであったことは間違いないだろう。 タイム抹消の厳しい現実、魅せた速さは幻に【学生フォーミュラ日本大会2023】 -学生フォーミュラ 学生フォーミュラのコラムサイト|KAERU JOURNAL (inokaeru.com)

お知らせ第1号  学生フォーミュラ日本大会2024 現地開催について 抜粋
グランドクリアランスに関するレギュレーション

そうした中で大会4日目にはオートクロスが行われた。ここで初めてチームはマシンをコース上に出すことになった訳だが、多くのチームがウイング高さやサイドフロアを上げて対策してこれに臨んでいたようで目立って路面干渉が指摘されることはなかった。しかし、ピットエリアの立ち話では「あのマシン、擦ってたよね?」という話も聞こえてきた。実際、コース脇で見ていると際どいマシンがいたのも事実だ。ただオートクロスは断続的に2周しかせず、1周目はペースが上げないチームが多い。実質競技ペースで走るのは1周で、その中で瞬間的な路面干渉を見つけて管制に上げることが出来るか、また管制も競技ペースでたった1周しかしないマシンの路面干渉を確かめてジャッジすることが出来るか、と言われると極めて難しいだろう。マシンがスタートして直後のポストなら時間的猶予もあるが、コース後半のポストから路面干渉の情報が上がっても確かめる前に対象のマシンはゴールしてコースを出てしまう。疑惑があってもお咎めなしで終わったマシンがいても、オートクロスでは仕方のない面もありそう。

路面干渉については、大会最終日のエンデュランスで重要な出来事があった。エンデュランスに出走したJilin Universityに対して路面干渉によるオレンジボールが出される事態が発生。1度コースから出され車検員による確認の後、再度コースイン。走り出すもまたオレンジボールが出され呼び戻される。これを何度か繰り返し、Jilin Universityはなんとかエンデュランスを完走した。連続走行でポストのマーシャルが路面干渉を確認出来たのは良いが、マシンを呼び出して確認しようにも停止状態では干渉の事実を確認出来ずにこうした事態が発生したと思われる。実際に、干渉位置を確かめるためにフロントウイングのエンドプレートやサイドフロアの端部に養生テープが貼られコースに戻されていた。これは、あくまでも干渉の有無を確認している各ポストがジャッジするのではなく、そこから管制に情報が上げられて管制でジャッジするという仕組みも関係していると想像する。

オレンジボール無視による黒旗が出されるJilin University

また路面干渉についてOKとNGの間にグラデーションがあるような印象を受けた。繰り返すが連続走行のエンデュランスなら路面干渉を指摘することは、少なくともオートクロスより容易なはず。しかし、コース上の排水溝を跨ぐ際に路面干渉によるものと思われる音が出ているマシンがJilin Universityの以外にもいたように思うが、止められることはなかった。ポストによる違いなのか、擦っている程度の問題なのか、いずれにせよ正確なジャッジだったかと言われると疑問が残る。

5コーナーに進入するJilin University
エンドプレートとサイドフロアにテープが貼られている

もちろん大前提として、レギュレーションで決められている以上、対策を施すのはチーム側の責任である。如何なる状態でも路面と干渉しなければ良く、エアロや重心高によるタイムゲインがあっても、その取り分に頼らずライバルに差をつけられるだけのマシンを用意すれば良い。そう言ってしまえばそれまでなのだが、ジャッジにグラデーションがあるままで地上高を攻めたマシンが出てきた結果「NGとジャッジされないギリギリの擦り具合を攻めたマシンが勝ち」となってしまうのは、競技としてはあまりにも不健全だ。新しい会場にもかかわらず、会場でのリハーサルが出来ない状況での動的運営は大変な苦労があったと想像する。いくつか大きなマシントラブルがある中でも無事に大会を終えられたことに対して、動的関係者に敬意を表するが、こと動的のジャッジについては来年以降の大会そして動的イベントがより良いものになることを期待したい。