ダスティな路面を見極めながら、ひとつずつ速さを見つけていく【エコパ合同テスト】
7月20日(日)、静岡県袋井市のエコパにて中部勢による合同テストが開催された。名古屋大学、名古屋工業大学をはじめ、岐阜大学や静岡大学など計6チームがマシンを持ち込み、盛夏のなかでの走行テストに臨んだ。天候は一日を通して快晴で、10時前には路面温度が50℃を超えるなど、今シーズンの合同テストの中でも最も過酷なコンディションとなった。さらに、週初めの降雨の影響からか、路面には砂利や細かい砂埃が広がり、マシン挙動の見極めが難しい一日となった。


6月末の泉大津テストで存在感を見せた名古屋工業大学は、LSDのベースセットを変更してエコパに臨んだ。チームは「泉大津でも出口でリアが砕ける動きがあって、プライベートテストの中でも同様に出ていた」「LSDのセットを変更して安定する方向を狙った」と語る。しかし、この日の滑りやすい路面の影響もあってか、マシンの挙動は思うように安定せず、「午前中、ミドルは良かったが、入口でも出口でもリアが出ていた」「タイヤ的に溶けるところまで行っていなくて滑っている感じだった」と話す。それでも、「そこに対してリアの動きがマイルドになる方向に変更して午前中に入口での症状を抑えることは出来た」「出口の滑りは最大出力でないと見えないところがあったので、午後に向けては出力を上げてサスのセット変更を試みた」「ダンパー、トー、スタビなどいろいろ変更して最終的には落ち着く方向に効果確認が出来た」と振り返る。この日はダンパーの効果確認も目的の一つであり、一定の成果が得られたとして、内容としては上々のテストだったようだ。ただし、目標タイムにはわずかに届かず、記録は64.7秒。目標とした63秒台にはあと一歩だった。次回の泉大津テストに向けては、今回の成果を持ち込み、さらに精度の高い確認を行う予定だ。名工は着実にマシンを仕上げてきている。



この日、積極的に周回を重ねていたのが岐阜大学。今年は、これまでのエンジン縦置きシャフト駆動から、より一般的な横置きチェーン駆動に大きく仕様を変更した。大幅な構成変更を行いながらもシェイクダウンを完了させ、エコパでも安定した走行を重ねていたあたりは、さすが上位常連チームといえる。これまでのテストでは、フロントの入りの悪さが課題だったようで、ドライバーは「全体的にフロントが入っていかないというのが課題だった」「Mコーナーを意識したような深いコーナーで入らなかった」「今日いろいろ試して、Usedタイヤでも曲がる方向にすることが出来た」とコメントする。セットアップを担うエンジニアは「去年と似た特性でマシンを作って来たが、変更した部分の影響が出ていた感じ」「今日はある程度バランスを取ったところで、立ち上がりのスライドに照準を定めてセット変更を試みた」「主にリア周り細かい調整をして、レイクをつける方向で確認したら明確に良くなった」と手応えを語った。また、この日は2023年大会で主力ドライバーを務めたチームOBがステアリングを握り、フィードバックを提供。「フロントの入り」と「パワー不足」に言及していた。昨年のエンデュランスでは安定したラップの中でファステストを記録した岐阜大学。今年はライバルたちから「岐阜大さんのような動きにしたい」と称されるマシン作りの模範となっている。その旋回特性はこの日も健在で、コーナーミッドでのスムーズな動きが際立っていた。ここから、入口と出口の挙動をどうまとめ上げていくかに注目したい。



そして、驚きを与えたのが地元・静岡大学だ。昨年はコースインすら叶わず、悔しい思いで大会を終えていたため、周回コースでの走行経験がない状態でのエコパテストとなった。それにもかかわらず、マシンの加速感は他のEV勢に引けを取らず、昨年の結果を覆すような走りを披露した。ドライバーは「5月中旬くらいにシェイクダウンを済ませて、走行を重ねてきた」「去年よりも踏めるマシンになっている」「去年も走ったら速いマシンではあったが、今年は出力を出せるようになった」と手応えを語った。一方で課題も見えてきたようで、「低速域でアクセルに対してリニアに動かないところがある」「特にスラロームは難しい」と述べている。シャシー面ではフロントの入りに難があったようで、ダンパーとARBの調整で前寄りのセットに変更したという。なお、エコパのような本格的な合同テストはほとんどのチームメンバーにとって初体験だったとのことで、ドライバーの経験値向上と同時に、チームの動き方の確認も着実に進めていた。後発組のヤマハEV勢に後れを取っていたが、ここにきて追い上げを見せる走行を披露した。



一方、静岡工科自動車大学校は昨年EVからICVに戻るという異例の転換を見せたが、今回もトラブルに見舞われながらも可能な限り周回を重ねていたのが印象的だった。残念な結果となったのは名古屋大学と富山大学。名古屋大学は、アウターハブ化とホイール変更を施したマシンを持ち込んだものの、マシントラブルによりコースインできず、無念の撤収となった。富山大学は朝一番にマシンを送り出す勢いを見せたが、アクセルを全開にした瞬間にシステムがダウン。バッテリーボードの損傷が確認され、修復は不可能と判断されて走行を断念した。



次回のエコパ合同テストは、8月4日~6日が関東勢、8月7日~9日が中部勢の枠で実施予定となっている。それまでに各チームがどこまで仕上げてくるか、楽しみに待ちたい。