安定のNATS、粘る千葉と工学院、トラブルを抱えても競り合う上位勢【JARI合同テスト】

8月16日、17日に日本自動車研究所(JARI)の城里テストセンターで行われた合同テスト。今回はその2日目だ。前日(千葉大が1日目トップタイム、工学院はスキッドパッドで速さを見せる【JARI合同テスト】 -学生フォーミュラ 学生フォーミュラのコラムサイト|KAERU JOURNAL)の参加チームに加え、この日からは東北大学や上智大学なども合流した。朝から湿度が高く、前日よりも日差しが強い。路面は一日を通してドライだったが、多くのマシンが周回したことでラバーが乗り、前日以上にコンディションは良好だった。

前日はスキッドパッドの走行に留めた工学院大学は、この日ついに周回コースへマシンを投入。走行開始から彼ららしいオペレーションを披露した。コースイン直後、ホームストレート上でマシンを停車させ、そこからエンジン回転を上げてスタンディングスタートで周回に入った。これは大会本番のオートクロスを想定したリハーサルで、クラッチミートによる発進の巧拙がタイムに影響することを踏まえたものだ。走行を重ねてもマシンバランスは良く、動きは小さいながらリアに粘りを感じさせる走りを見せた。タイムアップが期待された矢先、リアウイングが破損。翼端板が外れ、固定していたフラップが脱落するトラブルに見舞われた。原因はウイング内部に仕込んだアクリル材の接着剥離とされる。このままウイング無しで走行を続けるかと思われたが、チームは昼休憩の間に修復を完了。途中バッテリー冷却への対応に追われたが、夕方には本調子を取り戻した。フレッシュタイヤに交換してエンデュランスシミュレーションをこなし、走行終了直前の17時過ぎにはアタックを敢行。この日のトップタイムを叩き出し、2日間を通しての最速となった。ドライバーは「エコパからはキャンバーをわずかに調整して臨んだ」「茂木であったようなフロントが逃げるようなことはなかった」「マシンなりに走らせても、上手く走ってくれるようなマシンに仕上がっている」「マシンとしてはだいぶ煮詰まって来た感覚がある」と手応えを口にした。ただし冷却問題は課題として残っており、大会までのテストで対策を進めるという。タイムは唯一の70秒台、70.4秒だった。

ライバルがトラブルに苦しむ中、NATSはこの日も安定したオペレーションを展開した。前日に続き、セットアップの調整から走行をスタート。エコパの状態からフロントを強める方向を試したが、結局は前日のセットが最適だったという。午前中にはこのセッティングでベストタイムを記録したが、使用していたタイヤは摩耗が進み、特にフロントは構造が見えるほどだった。午後の走行開始時には新品タイヤへ交換し、エンデュランスシミュレーションを実施。ライバルがコース上でスローダウンやストップする場面もあったが、10周×2本を別ドライバーで走り切り、72秒台を含む安定したペースを刻んだ。路面温度は60℃を超えており、Hoosierのコンパウンドには厳しい状況。スティント後半には熱ダレが出てセーブ走行を強いられた。「午前はタイヤがずるずるの状態でセットを見ていて、その状態でNewタイヤを入れたのでバランスとしてフロントの応答が弱い感じがした」「ただ、この路面(JARIの路面)に合わせても仕方ないところなので、難しいところだった」とドライバーは振り返る。NATSはこの後の茂木テストには参加せず、学内コースで最終調整を行う予定。タイムは71.8秒でこの日の2番手。午後の新品タイヤでロングランではなく一発アタックを狙っていれば、さらに面白い展開になっていたかもしれない。

3番手につけたのは千葉大学だった。前日はトップタイムを記録したが、その際に発生したパンクが尾を引き、この日は我慢の時間が続いた。朝からパンクしていない古いタイヤに戻してドライバー練習を行ったが、工学院と同様にリアウイングが破損。翼端板が外れるトラブルに見舞われた。ただし支持構造が異なり、翼端板がフレームと締結されていたため脱落には至らなかった。原因はやはりアクリル材の接着剥離で、翼端板と翼の接合部が外れた格好となった。千葉大学はリアウイングを外し、フロントウイングのみで走行を続行。新人ドライバーを含めた練習を再開した。夕方には工学院と同じく走行終了間際にアタックを敢行。前日にパンクしたタイヤを空気を補充して使用し、73.2秒を記録した。前日のタイムには届かなかったが、リアウイング無し、さらにタイヤ状況を考慮すれば上出来といえる。ドライバーは「ウイングが壊れるのは予想外だったが、リアウイングを外してやれることをやろうという方向に変更した」「前日からLSDの設定を変更してみたが、リアウイングが無いことの影響かトラクションをかけるところでふらつきを感じた」「実力を見極めたかったが出来なかったので、茂木に向けてトラブル解消して持ち込みたい」「感触としては、前2台に対しては届かない距離ではないと思う」と振り返り、苦しいテストながらも手応えを掴んだ様子だった。

今回のテストでは、多くのチームがマシンをコースに送り出し、トラブルを対処しながらでも周回を重ねているところが印象的だった。大会まで1ヶ月を切っていて、チームとしても切羽詰まっているのは間違いないだろうが、走るところまでは来ていることが重要だ。車検やトラブルを対処しきれるかという問題もあるが、マシンが走らないことにはどうにもならない。多くのチームが走れる状態にあることは大会に向けてポジティブなことであり、チームがトラブルをどう対処してマシンを持ち込んで来るのか楽しみである。