学生フォーミュラ2026 JARI合同テスト|同志社と工学院、例年以上に早い仕上がりで68秒台を競る

Text : 蛙田 三也(Sanya Kaeruda)

 5月3日から3日間にわたって開催されたJARI合同テスト。2日目は、同志社大学が好タイムを記録して関東勢を驚かせる一方、工学院大学もそれに迫るポテンシャルを感じさせた。完全ドライで迎える最終日、両者の直接対決に注目が集まった。天候は晴れ。路面はドライだが風が強く、気温・路温ともに大きくは上がらないコンディション。ただ、2日目午後に各車がドライ走行を重ね、その後大きな雨が降らなかったこともあり、路面にはある程度ラバーが乗っている印象だった。

 この日も開始直後から工学院大学がコースイン。その一方で同志社大学は、まずスキッドパッドで車両チェックを進めた。どうやらドライブ側スプロケットにトラブルがあったようで、修復後の状態確認を優先していた模様だ。その後コースへ出た同志社大学だったが、前日ほどバランスは良くない。スラロームではリアがインリフトする場面も見られ、ドライバーもやや慌ただしい動きに見えた。ドライバーは、「朝イチ、Usedからスタートしたが、急にグリップが落ちたように感じた」「Newタイヤを想定したフロント内圧にしていて、Usedだとグリップが薄く感じた」「フロントが食わない分、舵が大きくなって、リアが浮いていたのだと思う」とコメント。午前最後には、このUsedタイヤのバランスのままNewタイヤを投入した。2周を丁寧にスクラブした後、一度戻り、車両確認と調整を実施。その後、オートクロス想定の計測2周アタックへ向かった。1周目は72.3秒と慎重に入り、続く2周目で68.8秒をマーク。ただ、前日のドライ路面・Usedタイヤで69.2秒を記録していたことを考えると、Newタイヤの恩恵は想像より小さいようにも見える。この結果について、「UsedからNewに変えて、飛び抜けて良くなった感じがなかった」「局所的に見れば、グリップは上がっているが、定常での総和がそこまで上がっていないと感じる」「大会に向けては、Newタイヤの使い方を模索しないといけない」と語った。

 同志社大学は遠方からの参加ということもあり、午前セッションでテストを終了。彼らの68.8秒という驚異的タイムだけが残る状況となった。お昼休みの時点で、「いやー午後にNewタイヤは入れるけど、あのタイムは見えない笑」と漏らしたのは工学院大学のドライバーだ。工学院大学は午前から午後にかけてUsedタイヤで周回を重ね、細かくドライバーを交代しながら走行距離を稼いでいた。「路面温度的には、(Newタイヤを)いつ入れてもいいが、まずは若手を走らせたい」とのこと。ドライ路面とUsedタイヤでフロントが薄くなった同志社大学に対し、工学院大学は徐々にリアグリップが不足している印象だった。右右と、その後の左、高速区間でリアが粘り切れない様子を見せる。途中には電装トラブルも発生し、ピットにこもる時間もあったが、走行を継続。16時を過ぎ、比較的気温が下がったタイミングでようやくNewタイヤを投入した。1アタック目は69.2秒。このまま同志社大学に届かないかと思われたが、続く2アタック目で68.7秒を記録。ホームのJARIで、関東勢としての意地を見せた。「基本的には昨年からのセットアップの方向性は変わらず、小さい舵角で曲がるようにしている」「ロールセンターのバランスを整えて、POUを上手く使おうとしている」「その成果もあってか、エントリーから定常は狙った通りに曲がれるようになった」「Usedではリアの粘りがなかったが、Newタイヤの恩恵もあって、高速でリアが粘るようになってバランスも良くなった、今はプッシュ気味なくらい」と語り、最速タイムを奪い返した手応えと安堵を見せた。ただ最後には、「感触は悪くなかったが、(同志社との)差が想像以上に小さかった」「もう少しJARIでの経験値分、地の利があると思っていた」「路面コンディションはこちらの方が良かったので、良くてとんとんか、ポテンシャルはむこう(同志社)の方があるかもしれない」「気が気ではないが、まだステアリングジオなど試せていないこともあるので、引き続き調整を進めていきたい」と冷静に現状を分析した。

 昨年車両で参加していたのは日本自動車大学校(NATS)。4年制大学とは異なり、通年カリキュラムの中で学生フォーミュラ活動を行う彼らは、ライバルたちのようにプロジェクトを前倒しすることが難しかったのか、今年は特例のSecond Year Vehiclesを選択すると見られる。それでも、この日に向けて細かな変更を加えてきたようで、セット変更を繰り返しながら評価を進めていた。また、ここ数年エンデュランスを担ってきたベテランドライバー2人が同時に交代することもあり、次世代ドライバー育成にも力を入れていた印象だ。昨年までエンデュランスを担当していたドライバーは、「(今年のドライバーは)まだ、操作がワンパターンで練習の必要があるが、少しずつ学F車両に慣れてきたと思う」とコメント。同志社大学、工学院大学のようにNewタイヤではなかったが、スクラブ程度のタイヤでNATSもアタックを実施。70.4秒を記録し、Newタイヤ勢には届かなかったものの、この日を3番手で終えた。

 前日、ドライ路面でインナースプリングの評価を進めるとしていた名古屋工業大学は、2日目終了時点で前後アップライトを昨年のものへ戻していた。どうやら今年から新規投入したブレーキローターが変形していたらしく、加えてローター単体で交換できなかったため、この大掛かりな変更を実施したという。しかし、そこまで対応してもテスト初日から続くブレーキトラブルは改善せず、最終日は様子を見ながらの走行となった。ドライバーは、「ブレーキトラブルの原因は概ね見当がついているが、ここでできることはない」「1周目しか本来のペースで走れないが、できる範囲でインナースプリングと、エアロの評価を進めた」とのこと。「インナースプリングは、パッカーを入れて、昨日よりもギャップを詰めた状態で走った」「ただ、やはりエアロでのストロークよりも、ブレーキングでのストロークが大きく、ヘアピンなどで突っ張ってしまって、バネが固いだけの動きになってしまった」「もう少し試したい気持ちもあるが、うちはEVで、1回の走れる時間に制限がある中で、これだけを追いかけている余裕はない」「ここで見切りをつけるが、JARIまで来て、フルコースを走って見えたことでもあるため、遠かったが来て良かった」と語った。終始Usedタイヤで走行を続け、エースドライバーが記録したタイムは71.0秒。本調子ではないものの、昨年国内最速だったチームだけに、ここからの巻き返しに期待したい。

 例年よりも早いペースで進行する今シーズンだが、同志社大学と工学院大学を見る限り、その仕上がりはさらに前倒しされている印象だ。例年で言えば、6月頭の状態に相当するレベルで、マシンもドライバーもすでに速い。両チームともそれなりの仕様変更を加え、フルコース走行は今回がシーズン初だったにもかかわらず、いきなり高いパフォーマンスを披露した。関東、関西ともに、この2校が今後のベンチマークになるのは間違いない。限られた時間をどう使ったか。その差が、例年以上にパフォーマンスへ直結するシーズンになりそうだ。