今年もテストが本格化、大阪に関西・中部の上位が揃った【関西合同テスト】

6月28日、29日にかけて開催される泉大津テストには昨年度王者の京都工芸繊維大学をはじめ、大阪大学など関西の強豪勢に加え、中部からは名古屋大学、名古屋工業大学といったEV上位陣も遠征参戦した。テストコースは、実際の大会を想定したエンデュランスのレイアウトで、全長は約900m。朝から快晴となり、午前9時過ぎには路面温度が48℃に達し、各車にとっては厳しいコンディションの中での走行となった。

この日、最初にマシンを送り出したのは京都工芸繊維大学。持ち込みの状態は、全体的にスプリングレートを落とす方向で調整が施されていた。エースドライバー久保の卒業に伴い、ドライバーラインナップも刷新された今年の京工繊は、セットアップも応答性重視から限界性能とドライバビリティを優先した方向へとシフトしてきた模様。エンデュランス想定のロングランに入るも、前半スティント4周目あたりから明らかにトルク感が薄れ、走行にメリハリが欠ける状態となった。後半はドライバーを交代して再スタートを切ったが、まもなくマシンをストップ。確認の結果、ステアリングギアボックスとモノコックの締結部に損傷が見つかった。エンジニアは「(スキパで)フロントの入力が伝わってこないっていうコメントもあって、そこで気付けたらよかったが、レートを落として応答が落ちているのかと思って見落としてしまった」と語る。走行中止も懸念されたが、ここからチームは約2時間で修復を完了させ、コース復帰。修復直後のアウティングで68.9秒を叩き出し、この日のトップタイムを記録した。その後は車高やダンパーを調整しつつアタックを繰り返したが、タイム更新はならず。フロントの応答性不足とリアのスタビリティの課題を残す結果となった。

photo by @125ascothttps://x.com/125ascot
外からは見えないが噂通りイナーターを搭載していた、詳細はまた後日

この日、最も注目を集めたのは名古屋工業大学だった。今年はバッテリーを一新し、車両全体で数十キロレベルの軽量化を達成。ライバルチームからもそのポテンシャルに注目が集まっていた。その実力はコース上でも明らかで、旋回初期の反応が一段と鋭くなり、マシン全体が軽快に動く仕上がりを見せた。リアのヨーが収まりきらない場面も見られたが、チームは冷静にバランス調整を実施。的確なセットアップ変更でその不安定さを解消していた。ピットの雰囲気も安定感があり、オペレーション面でも高い完成度を示していた。ドライバー川合も自信をのぞかせ、「やはり軽量化が効いている」「去年の車両よりもステアリングをきったときの反応が速くなっていて、全体的に軽くなって速くなっている」「バッテリーを載せ替えて、軽量化以外にもモーターの性能を使い切れるようになった」「またモーターの出力に対して、シャシー側のキャパが上がっているように感じる」「今日はLSDのトラブルもあって、リアが少しピーキーになっている」「低速コーナー、Mコーナーの2個目、3個目だとフロントが入っていかなくてきり足さないといけないのが今日の課題」とコメント。最終的には69.8秒のタイムで京工繊に1秒差まで迫り、この日2番手タイムをマークした。

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バッテリーを一新して、ACCもやや低くなったか

一方、ピットでの滞在時間が長かった大阪大学は、トラブルではなく入念なステアリング周り、ジオメトリのチェックをしていた模様。今季のマシンはホイールベースを延長し、タイヤも昨年のフロント6J、リア7.5Jから前後7.5Jに統一。ホイールベース延長の影響もあり、マシンの特性は「曲がらない方向」になったという。多くの走行時間を担ったドライバー中田は、「ホイールベースが伸びてスタビリティがあがったのはいいが、それで悩まされている」「何年か前の京工繊みたいな後ろ重心な印象の車になっていて、苦戦していた」と述べた。リア周りのバネ系の見直しを進めた結果、「リアのレートが正しいところにきて、リアが回り込むような方向になった」「去年まではアクセル踏むとリアが滑ってトラクションを稼げていなかったが、今年はアクセルを開けても前に進んでくれるようになった」と手応えを語った。一方でエンジニアからは「一方はヨーがしっかり立ち上がって、リアもついてくるというコメントだったが、もう一方は全然ドアンダーで奥にならないと曲がらないというコメントで全く違った」「やりたい方向性にできて運転しやすい車になった印象はあるが、ドライバーを変えるとフィードバックが大きく変わったので帰って車の状態をちゃんと確認したい」との声も聞かれ、今年も両ドライバーに対する合わせ込みが阪大の課題になりそうだ。

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周回の多くを担当したドライバー中田

そのほか、同志社大学、神戸大学、立命館大学、名古屋大学もそれぞれにトラブル対応をこなしながら、全チームが周回走行を実施。中でも立命館大学は、71.5秒をマークし、京工繊から2.6秒差の位置につけた。リアの不安定な動きが課題とされているが、チームはまだ手詰まり感を見せながらも、ここからのタイムアップに期待がかかる。明日のテストセッションにも中部勢の参加が継続される予定で、明日もテストは白熱しそうだ。

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