曲がるようにはなった、しかしリアが軽い。それぞれ新コースに試行錯誤。【関西合同テスト】

7月20日、21日の2日間大阪・泉大津フェニックスで関西勢による合同テストが開催された。訪問した21日には京都工芸繊維大学、大阪大学、神戸大学等上位チームに加えて、5年振りに九州工業大学がこのテストに参加した。6月29日と同様に、スキッドパッド、アクセラレーションと周回コースの他にブレーキテストのレーンが設けられ敷地を目一杯に活用したテストが組まれていた。なお、周回コースは前回からレイアウトが変更されていて、今回の方が2~3秒速くなっている。

今年好調にマシンを走らせている九州工業大学は少数精鋭でこのテストに臨んだ。「大会コースの要素を取り入れたコースで練習はしているが、ここに来ると思っていた以上にコースが狭かったりして難しかった」「ただ本番コースを走れたことと、強豪チームと一緒にテスト出来たことは大きな収穫」「遠征にはそれなりのお金を使っているが、それ以上の価値があったと思う」と話すのは1人でこの2日間のテストを走ったドライバー。マシンとしては低速でのアンダーが課題になったようで、曲がる方向へのセット変更を試していくつか発見もあったようで、終始ポジティブなリアクションだ。今回投入したNewタイヤで2日間のテストを走り切り、ベストは72秒台。関西強豪チームの背中が十分見える位置まで来た。

前回の泉大津テストからスポンサー企業での合同テストと、プライベートテストを実施してこの日を迎えた京都工芸繊維大学は大胆にセットを変えてきた。前回までフロントに搭載されていたサードダンパーが取り外され、フロントのスプリングレート(ホイールレートはベルクランクで変更される)もこれまでの半分以下にまで落とされていた。彼らの狙い通り、コース奥の低荷重コーナーでは素直に回頭している印象で改善が見られた。ショートランでは参加チームの中で唯一69秒台に入れ、前回ライバルに詰められたギャップを広げてきた。「進入からのヨーレートの立ち上がりが格段に良くなった」とドライバーも好感触だ。それでも昨年ほどのアドバンテージは無い。

この状況を踏まえてか、エンデュランスのドライバー配置にも変更が加えられている。昨年大会ではエースドライバーを前半スティントに配して、エンデュランスのファステストラップを狙いにいった京工繊だが、この日のエンデュランスシミュレーションではエースドライバーを後半スティントに配置。平均ラップと確実な完走を狙いにいった印象だ。また、エンデュランスでは別の問題も出て来ているとのこと。エンジニアは、「フロントのスプリングレートを変えて試してきたがリアが足りない」「リアのグリップ、公転の速度も上げなきゃいけない」「リアの摩耗も早い」と話す。言葉の通り、リアグリップが薄い印象でエンデュランス後は右リアの摩耗が激しく、ドライバーも4周目で熱ダレを感じるほどだったとか。

京工繊同様にセットを大きく変更してきた大阪大学、ショートランでは70秒台前半を出して京工繊の1秒以内に食らいつく。前回はエースドライバーに合わせて、どちらかと言うとリアに引っかかりを作り、蹴り出せる方向に振っていた印象だったが今回はセカンドドライバーに合わせて変更したという。ステアリングジオメトリー等を変更したマシンは明らかに曲がる方向になっていた。こちらもこの日エンデュランスシミュレーションを実施。京工繊とは逆で、エースドライバーを前半スティントに、セカンドドライバーを後半スティントに配置した。無事に20周を走り切った阪大だが、セカンドドライバーはマシンを止めるなり「リアなくなった!」と一言。曲がる方向になったがリアの限界が下がってしまったのは、京工繊と同じようだ。京工繊と違うところは熱ダレのレベル。京工繊がスティントの真ん中当たりから熱ダレを感じているのに対して、阪大のドライバーは二人とも熱ダレを感じていない。またフロントの落ちも無く、意外と扱いやすいのでは?といったリアクションだ。さらに阪大のドライバー二人は運転に違いが有り、この日のセットのほうが両者のタイム差が埋まりトータルの取り分が多いとのこと。実際、この日のエンデュランスのペースは京工繊を上回った。もちろん京工繊の後半スティントがペースコントロールされている等の事情はあるが同じところで戦えているのは間違いなさそうだ。

今回のテストで同志社大学も大きく前進し、阪大や神大の後に続く。コースの最終スラローム前、ヘアピンが続くところで曲がらないことが課題だったという同志社。今回はスプリングレートを全体的に上げて、リアが回り込む方向に変えてきた。ドライバーも「前回はどアンダーだった箇所が改善された」とポジティブなリアクションだ。タイムは72秒前半、ライバルに対し2秒ほどのビハイドにあるが、同志社はここまでUsedタイヤで走行を続けており、72秒台というタイムもUsedタイヤによるもの。ドライバーも「Newを履けば70秒台も見える」と自信のコメントしている。気になるのは、上の2チーム同様にリアの軽さを指摘している点で「良くはなっているが、リアの限界は早い」とのこと。

今回、20日にNewタイヤを投入して阪大と並ぶ70秒台前半を出してきたのは神戸大学。ライバルが大きく変更したマシンを持ち込んだのに対して、ほとんど変更せずに持ち込んだという。前回のコースレイアウトでUsedタイヤを履いて76秒台だった神大だが、今回のコースレイアウトでNewタイヤを履いたところ大きくタイムアップを果たした。チームは「Newタイヤを履いたのもあるが、(レイアウトが変わって)苦手だったヘアピンが減ったことも大きい」と語る。レイアウトの変更分が3秒程度と仮定しても、それと同じくらいのタイムゲインをNewタイヤで得ている。もう一つ興味深いのは、神大のセットの方向性がライバルと少し異なること。すでに述べた通り、ライバルが曲がる方向にした結果リアが軽くなっている一方で、神大のリアにはどっしり感があり、むしろ最終コーナーをプッシュ気味に立ち上がっている。この違いがありながらも、同じようなタイムを出しているのが面白い。

今年から採用されるコースはヘアピンのような舵角が深いコーナーが多く、またそれらが連続して現れるため通常のヘアピンのようにブレーキングでの荷重移動を使ったコーナリングが出来ず低荷重のコーナリングが続くことになる。それを考えると、いくつかのチームのように定常で曲がる方向、もっと言えばリアを降り出す方向に進むのは当然だ。しかし、リアを酷使すれば摩耗も進むためロングランでの速さを失う可能性もある。このあたりを上位チームが接戦の中でどう合わせ込んで来るか、大会を見据えたチームの動きに注目だ。