中部勢が迫るも、チャンピオンチームの強烈な一撃【関西合同テスト】
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6月28日・29日にかけて開催された泉大津テストの2日目。この日は前日参加の7チームに岡山大学が加わった。テストは8時30分の時点で、京都工芸繊維大学はすでにマシンを出走させており、アクセラレーションに取り組んでいた。他チームも次々にマシンをコースに持ち込み、限られた走行時間を有効に使う姿勢を見せていた。天候は前日と変わらず快晴。風はやや強くなったことで、暑さの中にも幾分過ごしやすさが感じられた。それでも日差しは強く、9時30分時点での路面温度はすでに46℃。手で触れ続けるのが困難なほどの熱さだった。さらに正午を過ぎると50℃を超え、ピーク時には55℃に達した。この高温になる前、比較的涼しい時間帯にベストタイムを記録したのが、名古屋大学と名古屋工業大学の中部勢2チームだった。
名古屋工業大学は前日、持ち込み状態の段階から応答性に優れ、旋回性能が高いマシンを披露していた。ただしLSDに課題を抱えており、「曲がるがヨーが止まらない」という状態にあった。この日はその問題に対処し、朝からLSDのイニシャルトルクを細かく測定。走行の合間にも調整を重ねた。ドライバーは、「オープンデフよりのセットで組んで来ている」「ヨーが出やすい方向を狙っている」「それをベースに今日はイニシャル(トルク)を変更して美味しいところを探していた」「少し上げたりもしたが、コーナーの欲しいところより前でヨーが止まってしまったりもあって、結果的にある程度バランスできるところが見つかった」と語る。またステアリングレシオも変更し、「レシオを変えたことで操作はきつくなったが、曲がって欲しいところで曲がっていけるようになった」と手応えを得ていた。この日のタイムについては、「ちょうど路面温度が良い状態で、タイヤもまだライフが残っていたので、昨日の工繊さんと同じくらいのタイムが出た」「個人的にはいい感触だと思っている」とコメント。前日トップの京都工芸繊維大学が記録した68.9秒と同タイムをマークして、テストを終えた。



そして、同じく午前中にタイムを残したのが名古屋大学。1日目はトラブルに見舞われて満足に走れず、終了時にはドライバーが「トラブルシュートも今回の(泉大津に来た)目的だから、想定内ではある」「ただ名工が速くて、気にはなっている」と語っていた。しかしこの日は、依然としてマシントラブルは見られたものの、前日ほどの深刻さはなく、ピットテントに戻る回数は明らかに減少していた。そんな中、エースドライバーがマシンに乗り込むと、ストレートでは暴力的な加速を見せ、高速コーナーでも安定した挙動で周回を重ねた。ドライバーは、「思ったよりもタイムは出たな、という印象」「去年に比べてリアが落ち着いた方向ではある」「一方で、リアが引っ張るように低速コーナーでフロントが入らないのが課題」「シャシー側でも、制御側でも改善する手はあって、まだ良くなる余地はあるので大会まで頑張っていきたい」「それでも昨年の同時期に比べるとしっかり走れていて、進歩していると感じる」とコメント。ベストタイムは68.8秒をマークし、前日の京都工芸繊維大学のタイムを0.1秒上回った。7月のエコパテストに向けては新しいホイールの投入が予定されているらしく、込める弾はまだありそうだ。



午後に入って気温とともに路面温度が上昇する中、タイムを出したのが京都工芸繊維大学だった。1日目はトラブルを抱えながらも走行を重ねていたが、この日はウイング破損の修復作業からスタート。修復作業中はウイングレスでアクセラレーション走行を実施し、点火タイミングなどエンジン調整に時間をかけた。その後、修復が完了したウイングを搭載してコースインするが、ここで電装系のトラブルが発生。スタート地点にマシンを持ち込んでも始動できず、再びピットへ戻る、を繰り返した。最終的に14時ごろにトラブルが解決し、競技ペースでの走行を確認。ここでNewタイヤを投入し、ドライバーの吉田がアタックに入った。丁寧にアウトラップをこなした後の2周目、吉田は驚異の67.1秒を記録。吉田は、「Usedの時に感じていたターンインやミッドのアンダーが(Newタイヤに替えると)解消された」「(前後でタイヤ幅が異なるが)Newにしたことでバランスが崩れることはなかった」「昨年はNewでもリアがスナップすることがあったが、(リアタイヤを太くした)今年はそれがなく滑らず、踏んでいけるようになった」「その反面、Mコーナーでは少し待っている時間がある」とフィーリングを語った。それでも新しいセットはまだ課題も多いようで、吉田がアタックしたあとには昨年までのエースドライバー久保を乗せ、複数のパラメータを変更して効果を確認していた。



2日目のトップタイムは名古屋大学がマークしたかと思われたが、最後に京都工芸繊維大学が逆転。王者の貫禄を見せつけた。もっとも、名古屋大学と名古屋工業大学がUsedタイヤで記録したタイムに対して、京工繊はNewタイヤでのアタックだった。昨年も見られたように、Aichi Sky Expoのコースレイアウトになって以降、Newタイヤ投入時のタイム向上幅は大きい。そう考えると、各チームの間に思っているほどの差はないようにも思える。実際、他チームの反応も「京工繊にやられたー!」という悔しさではなく、冷静な受け止め方だった。さらに言えば、「まだこちらにも込める弾は残っている」と言わんばかりの表情を見せていた。今後の合同テストが予定されている7月・8月で、各チームの立ち位置がどう変化していくのかに注目したい。




