『昨年の速さ』の再現と進化に挑む【十勝スピードウェイ合宿テスト】
昨年、周囲の予想を裏切り、ICVクラスでトップタイムを記録した北海道大学。5月3日から3日間開催されたJARI合同テスト(後日レポート予定)でも、その名は自然と上位勢の話題に上がっていた。「北大がどうかですよね、気になりますよ」「北大ってどうなんですか?なんか情報ありますか?笑」そんな声が聞かれる中、北海道大学は5月2日から6日までの5日間、北海道・十勝スピードウェイで合宿テストを実施していた。
例年は8月に行われる合宿だが、今年は大会日程に合わせて前倒し。「メンバーがサーキットに泊まり込んで実施するため、連休に開催する必要があり、5月になった」とのことだ。昨年の速さは、偶然だったのか。それとも再現できるものなのか。『昨年の再現』に静かに挑む、今シーズンの北大を追った。


学生チームである以上、避けて通れないのが世代交代である。全国的にも、コロナ禍を支えながらチームを守り続けた世代が卒業の時期を迎えている。北大も例外ではない。一度はフレーム設計・製作のノウハウ継承が途絶えながらも、そこから立て直し、昨年の結果まで積み上げた世代がチームを離れる。2026年チームリーダーは、「偉大な先輩を見ながら活動してきた」と振り返る。「(ライバルたちで)世代交代で苦労しているチームも見ていて、自分がこれ以降、先輩と同じようにできるのか、また後輩たちも同じようにできるのか、という不安はある」それでも、マシンを完成させ、この合宿まで辿り着いたことには確かな手応えもあるようだ。「まずは、まともに走れて、今回の目的だったトラブルシューティングが出来て良かった」「今年のマシンが出来て、来年からも同じようにマシンを作れるようになることを大事に考えている」「このまま大会を完走できれば、引き継ぎという意味では一つ達成できると思う」単に今年速いマシンを作るだけではなく、“来年以降も作り続けられること”そのものが、今年の重要なテーマになっている。


そのテーマは、マシン作りにも現れている。車両は昨年の流れをベースにしながら、各部にアップデートを投入。フロントサスペンションの一部変更、ドライビングポジション変更に加え、昨年動作が不安定だった可変吸気も改善され、安定して作動するようになったという。さらに、Drexler製LSDも新たに採用された。ドライバーは昨年車について、「吊るしの状態ですでに良かった」と評価しながらも、「速さはあったが、ピーキーで、速く走らせるにはすごく狭いところでコントロールしないといけなかった」と振り返る。
だからこそ今年は、「誰が乗っても速さが出せるように、ドラビリを大事にしてきた」という。実際、合宿最終日の走りは、このテストが初めての本格走行とは思えないほど完成度が高い。すでに競技ペースで周回を重ねており、昨年の速さが偶然ではなかったことを感じさせる内容だった。



一方で、現状のセットはかなり攻めた方向にあるようにも見えた。動きとしては、昨年POUを投入したチームに近く、自転が強い印象。さらに立ち上がりで舵角が残ると、ドライバーがアクセルを踏み切れていない様子もあった。当然、チーム側もそこは認識済みだ。「今の段階では、少しピーキーな方向に寄せていて、まずは曲がるところを作っている」「ここからスタビリティを上げて落とし所を見つけたい」と、曲がる車を起点にしながら、そこへ安定性をどう足していくか。北大は、昨年の強みを理解した上で、その再構築を進めている。


もちろん、ここまで順調だったわけではないという。セットアップ担当メンバーによれば、「27秒くらいのコースだが、初日は31秒くらいだった」といい、「組み上げてみたら設計の狙いと異なる部分があって、その修正に時間を使ってしまった」と振り返る。一つ一つ確認しながら走行を続け、最終日には昨年と同等、あるいはそれ以上の感触まで到達。特に大きかったのが、フロントのジオメトリー変更だった。フロントロールセンター変更によって、狙った方向へクルマが反応した瞬間、ドライバーは「見つけた!」という感覚があったという。昨年得意としていた、低速コーナーで素早く向きを変え、エンジンパワーでタイムを稼ぐスタイルは、今年もチームが目指すところ。ただし、その上で「自分たちは(大会の)フルコースを走れないので、コントロールしやすいように、基本はアンダーステア寄りで持ち込みたい」とも語る。


大会戦略についても冷静だ。「オートクロス1本目は、確実にフィードバック出来るドライバーを乗せる」「必ずしも2本目にエースを持ってくることに拘らない」「昨年も、当日までわからなかったバンプの関係だとか、フィードバックがあって助かったところがある」さらに、「昨年は、ライバルの不調に助けられてあのポジションだったと思う」「マシンとしては6番手、7番手といったところ」と立ち位置を冷静に見ながらも、「今年は、最速を目指して準備をしたい」と続けた。


昨年の速さを、偶然ではなく“理由のある速さ”として紐解き、その再現と進化を目指す北海道大学。ライバルたちが気にしていた通り、今年もまた、上位勢の勢力図を揺るがす存在になりそうな気配は十分にある。

