圧倒的な装弾数の同志社に、ライバルたちも下を巻く【JARI合同テスト】
5月3日から5日の3日間、茨城県の日本自動車研究所 城里テストセンター(JARI)で、関東支部による合同テストが開催された。4月5日に続く今季2回目の開催となり、大会本番を想定した周回コースでの走行は、各校にとって今シーズン初の機会となった。工学院大学、千葉大学といった関東の上位勢に加え、中部から名古屋工業大学、関西から同志社大学も参加した。これまでも東北大学など他支部からの参加例はあったが、それ以外の支部から本格的に遠征してくるケースは、おそらく今回が初めてと思われる。中部にはエコパ、関西には泉大津フェニックスというフルコース相当を走行できる環境があるため、これまでは遠征の必要性が薄かった。ただ、中部では支部内のマシンがある程度動き始めないと合同テストの開催が難しく、名工がフルコースを走りたいタイミングと合わなかった可能性がある。一方の関西勢は、今季は泉大津フェニックスの空き日程と使用希望日が合わず、JARIへの遠征を選択したようだ。
JARI合同テスト2日目。明け方に降った雨の影響で、路面には水が残っていた。走行開始直後から、工学院、千葉、同志社が次々とコースイン。天気予報では路面が乾いていくことが明らかだったため、各チームとも、この変化するコンディションをどう使うかが問われていた。工学院と千葉は若手ドライバーを乗せ、トレーニングの時間に充てていた模様。同志社も同様の意味合いはあったが、こちらは昨年エンデュランスを担当したエースドライバーがステアリングを握り、周回を重ねていた。同志社のドライバーは、「ここまでフルウェットを走ったことがなかったので、良いトレーニングになった」「マシンは、ドライのフィーリングから大きく変わらず、縦方向のグリップが減った感じだった」と語る。
そんな同志社は、クラス優勝を見据え、多くのアップデートを投入してきた。ひとつはエンジンのオイルパン変更。これにより10mm以上エンジン搭載高を下げることに成功し、低重心化に寄与している。サスペンションではPOUを採用。昨年はLSDセットアップも含め、旋回性を重視した方向性だったが、POUによってドライバーがより曲げやすく、全体のバランスも取りやすくなったという。
そして、今年最も性能向上に効いていると思われるのがエアロパーツだ。昨年大会直後から開発を続けてきたというバネ下ウイングは、フロントベルクランクから伸びるリンクでウイングステー、メインプレーンと接続される構造。この時点のジオメトリでは、ロール時にもウイングを地面と平行に保つ設定となっていた。今年はシステム全体で10kg単位の軽量化にも成功したという。主な理由はウイング製法の変更。それに伴い、リアウイング支持構造もさらに華奢なものとなった。またエアロ性能について、ウェット路面での走りを見ても、リアウイング後方に発生する渦はライバル勢より濃く、高い位置まで伸びており、その効果を強く感じさせた。ライバルチームからも、「うちのエアロじゃあんな持ち方ではもたない、かなり軽いと思う」「あの高さにリアウイング置いたらそらぁ効きますよ笑」と驚きの声が上がっていた。
ドライアップ後の同志社は、タイヤ内圧とLSDの評価に時間を投入。「初めて上下20〜30kPaの範囲で内圧を変えてみたが、ここまで効くパラメータだと思わなかった」「低い方も、高い方もそれぞれポジティブな点、ネガティブな点がある」「内圧はアライメントを煮詰めたあと、大会時と同じような路面温度になったところで決めていきたい」と語る。LSDについても、「昨年のイニシャルトルク設定では低すぎて、高速コーナーで巻き始めてしまっていた」「どのあたりが良い値かはこれから探る必要があるが、昨年相当の低い値はないと感じた」と振り返った。Usedタイヤでドライ路面を走った同志社は、69.2秒を記録。関東勢を抑えてトップタイムでこの日を締めくくった。
その同志社に続くタイムをマークしたのは早稲田大学。同志社から0.9秒差となる70.1秒を記録した。基本的にはドライバートレーニングとセットアップ作業に時間を費やしていたという。現場で指揮を執るのは、今年の全日本ラリー選手権でも活躍する稲葉。Toyota Gazoo Racing WRC Challenge Programで培った経験を活かしながら、メンバー育成を進めている。「その時(育成プログラムの時)もそうですけど、ドライバーはセットアップに対して言及させてもらえないです」「乗って感じたことをそのまま伝える、っていう感じで」「だから、今乗っている彼らにも、もっと柔らかくした方がいいとか、車高下げた方がいいとかは言わせないようにしている」と語り、その姿勢はかなりストイック。それでも走行前には、「このアウティングは何を考えて走るの?」とドライバーへ声を掛ける場面も見られ、丁寧なコーチングを行っている様子がうかがえた。
そんな早稲田のマシンは、今年フレームを大幅に刷新。昨年まで構造的に剛性不足だった部分を見直し、大幅な剛性向上を果たしたという。それによってリアのスタビリティも改善。また、フロントロールセンター変更によるジオメトリ改良で、より曲がる方向へ特性を振ってきた。ここに快調なエンジンが組み合わさり、昨年比で3〜4秒ものタイムアップを実現している。思い返せば、昨年大会エンデュランスでは一時コースレコードを更新するなど、速さを見せていたチームとドライバー。それだけに、このタイムアップを脅威に感じるライバルは少なくないはずだ。さらに、今後はウイング搭載も予定されており、さらなるポテンシャル向上も期待される。
こちらも遠征組となる名工。朝一番はピットにいる時間が長かったが、「走っていると踏圧が下がってくる」と、前日から続くブレーキトラブルに悩まされていた。そのため、5周のアウティングをフルアタックで消化できない状況だった。それでも70.9秒を記録し、この日の3番手を死守。ドライバーは、「前日はエアロトラブルもあったので、エアロ無しでメカニカルバランスの確認を主にやっていた」「今日はそのバランスをスキッドパッドで確認した後、コースでウェットセットを試した」「マシンとしては、昨年の短い時間で向きを変える方向性から大きく変わっている」「フロントは昨年、低いレシオで使っていたPOUポジションをベースにしつつ、アンチダイブも減らした」「EVクラス優勝を考えるとエンデュランスのタイムが重要になる。そこで安定して走れるマシンを狙った」と説明する。
さらに今回試していたのが、ダンパーシャフトへ組み込んだインナースプリングだ。狙いは高速コーナーでの姿勢変化を抑え、エアロ性能を安定して発揮させること。ダウンフォースでストロークしていく動きを、インナースプリングで止めたいという考え方だろう。Super FormulaやSUPER GTでは、同様の狙いでバンプラバーを使用するケースもある。「ラバーの選択肢はなかったのか?」という問いに対しては、「学生フォーミュラでは制動時のストローク量も大きい。そこでラバーを当ててしまうと、インナースプリング以上に撓みがなくなり、ドライバーが何もできなくなると考えた」と回答した。実際、過去にはホンダ系エンジニアが同じ理由でリアにインナースプリングを好んで使っていた例もある。このインナースプリングは、本来パッカーと呼ばれる部品で潰れ量を管理するが、この日はウェットだったこともあり、パッカーは未装着。翌日以降、ドライ路面でさらにテストを進める予定だという。
そして、虎視眈々と準備を進めていたのが工学院だ。朝のドライバートレーニング後は、スキッドパッドでPOUとエアロ評価に時間を費やしていた。4月テストではPOUレシオを極端に高い領域まで試していたが、今回はそこから下げる方向で効果を確認していたという。実際の走りを見ると、4月よりフロントのロール量が減少し、リアの荷重抜けも抑えられている印象だった。エアロ評価では、翼を装着せず錘だけを取り付けたウイングステーを前後に装着し、データを取っていた。
夕方、わずかに雨がぱらつく中、工学院は同志社と同じタイミングでコースイン。同志社が3周目に71.0秒、4周目に70.0秒を刻む一方、工学院は3周目に70.9秒をマークした。今回の合同テストは同志社の独壇場になるかと思われたが、「関東勢のホームでそれは許さん」と言わんばかりのアタックで応戦。すでに戦いは始まっている、そう感じさせるJARI合同テスト2日目だった。

