学生フォーミュラ2026 関西合同テスト|揺るがぬ王者・京工繊、追う阪大、苦しむ同志社
Text : 蛙田 三也(Sanya Kaeruda)
Photo : 原島 由樹(Yuki Harashima)
エコパ合同テストから1週間。怒涛の合同テストは舞台を大阪・泉大津へ移し、7月11日から12日の2日間で開催された。関西勢による合同テスト初日の天候は晴れ。時折雲が広がり風が吹く時間帯もあったが、終日良好なコンディションの中で走行が行われた。京都工芸繊維大学、大阪大学、同志社大学といった昨年ICVクラス上位チームに加え、近年常連となりつつある九州工業大学も参加。会場にはスキッドパッド、アクセラレーション2本、さらにエンデュランス相当の周回コースが用意され、各チームはそれぞれのコースでテストメニューを消化していった。


周回走行で昨年との違いを最も感じたのは大阪大学だ。昨年大会ではオートクロスでICVクラス3位に入ったものの、大会本番ではテスト時のような速さを発揮できず苦戦した印象が残る。その要因はいくつか考えられるが、一つにはドライバーの好みとスキルの違いがあった。速さはあるものの、好みの異なる2名のドライバー双方にセットを合わせ込むことに苦労するシーズンが続いていた。そんな苦い経験を経てか、今年は両ドライバーがともに速さを発揮できるポイントを早い段階で見つけている、そんな第一印象を受けた。一方のドライバーには「少し自転が遅い」、もう一方には「リアの粘りが足りない」と、それぞれにわずかな不満を残しながらも、絶妙なバランスで仕上げられている印象だ。
セットアップを担当するエンジニアは、「去年の大会は、(セットとして)いきすぎたところがあったので、柔らかく乗りやすさを出しながら、ステアバランスを両ドライバーに合わせていった」「それが今回、実力として見ることができた感じ」「理想としては、スタビとか簡単に変えられるところで、両ドライバーに合わせられたらいいかなと思う」「(今日の)序盤は燃料系のトラブルも出て、エンディランスもガス欠症状が出てしまったが、ペースとしては悪くなかった」と語る。一発のアタックタイムよりも、2名のドライバーが安定して速く走れるポイントを見極める一日だったようだ。タイムは72秒台中盤。トップには届かなかったものの、タイヤのマイレージを考えれば、今年も十分な戦闘力を備えていると感じさせた。



着実にテストを進めた阪大とは対照的に、迷走していたのが同志社大学だ。朝からエンジンのハンチングがひどく、対応に追われる一日となった。時折アクセラレーションには姿を見せるものの、周回コースへ出てきたのはライバル勢よりかなり遅いタイミングだった。実は下馬評では優勝候補とも噂されるチームだけに、その苦戦は意外だった。ドライバーは、「エンジンもトラブってるが、シャシー側も思っていた挙動から離れていて、両方の悪循環で・・・辛かった(苦笑)」「(5月の)JARIを走った時のバランスが理想としてあったが、その時のセットで持ち込んでも異なる方向にいってしまった」「しかも自分の好みではない方向(フロントが弱くなる方向)に」「路面が変わった時に、傾向というか、良くなる部分と悪くなる部分があれば対処もできるが、全く異なるところになったので難しい」「今日持ち帰って(セット)ダウンも見ながら、明日やることを決めたい」と力無く答えた。
5月のJARIでは、ややリア寄りのセットをベースに、Newタイヤのグリップをうまく使い、フロントの粘りを引き出している印象だった。しかし泉大津では、そのセットが通用していないように見えた。ただ、大会会場となるAichi Sky Expoの路面はさらに性格が異なる。そのため、大会を見据えてどれだけ『オフセット』を持たせるのか、極めて悩ましい状況に置かれているようだ。この日のベストは72秒中盤。阪大と同等だが、同志社のタイヤの方が新しい。



この日のトップタイムを記録したのは昨年チャンピオンの京都工芸繊維大学だった。トラックエンジニアの交代、ベテランドライバーの卒業、EVとの同時進行によるリソースの分散など、今シーズンは決して好条件とは言えない。それでも蓋を開けてみれば、2番手の大阪大学を1秒以上引き離してトップタイムを記録。その強さは揺るがず、京都工芸繊維大学の底力、あるいは底知れなさを改めて見せつける結果となった。今年は昨年の課題だったトラクションの改善に取り組んできた。ただ、その過程で旋回性能が不足する方向へ進んだため、今回はその修正を盛り込んできたという。エンジニアは、「持ち込みは、これまでのテストで一番速かった状態で持ち込んだ」「今年の方針である脱出が改善されているもの」「進入がまだ求められるものがあるので、そこに対してどうアプローチするかという考えで、準備してきた」「これまでUsedでテストする時間が長く、リアが暴れることがあったが、今日New(タイヤ)を入れてセットを合わせてみたらリアが落ち着いてきた」「最後、タイヤが落ちてきた時に再度リアが暴れる症状が出たが、ダンパーのセットを変更したところ、それがハマって良いタイムを出せた」と説明する。
一方で、懸念も残るようだ。「リアを使い過ぎている傾向もある」「経験値の少ないドライバーを乗せると、リアを滑らせて向きを変えるようになってしまう」「8月の大会(の路面温度に対して)、オートクロスはどうにかなっても、エンディランス後半でタレて、辛くなるかもしれない」「エンデュランスの途中で挙動が変わると、ドライバー的にも難しくなると思うので、もう少し改善していきたい」と課題を挙げた。2日目は新しいドライバーの走行に加え、これまで十分な時間を割けていなかったスキッドパッドやアクセラレーションのテストを重点的に進める予定だという。



結果を見れば、例年通りの関西勢の勢力図と言える。この3チームに共通しているのは、昨年大会のオートクロスでテスト通りの走りを発揮できなかったこと。だからこそ今年は、3チームとも『大会に向けたオフセット』という共通のテーマを意識しているように感じられた。大阪大学が一発の速さをさらに磨いてくるのか。同志社大学がエンジンの調子と走りへの自信を取り戻すのか。京都工芸繊維大学が逃げ切るのか。それとも新たな伏兵が関西から現れるのか。昨年ICVトップ3が顔を揃えた関西合同テストは、2026年大会を占う上で見逃せないテストとなりそうだ。
1988年生まれ。大学在学中に学生フォーミュラに参加し、卒業後は自動車業界を経験。現在はモータースポーツを主軸とする技術ジャーナリストとして活動する。学生フォーミュラを起点に、競技車両の設計思想や製造の現場、競技を支えるエンジニアの思考を取材・執筆。技術と競技のあいだにある「それを作る人たちの思考」に関心を持ち、現在は国内外のレース車両開発や人へと取材領域を広げている。

