学生フォーミュラ2026 エコパ合同テスト|雨に翻弄された2日目、岐阜大の巧みなランプラン
Text : 蛙田 三也(Sanya Kaeruda)
Photo : 堀田 拓哉(Takuya Hotta)
7月4日、5日の2日間にわたって開催されたエコパ合同テスト。2日目は前夜から降り続いた雨の影響で、大きな水溜まりが残るフルウェットコンディションからスタートした。午前中は霧雨が降り続き、路面はなかなか乾かない状況が続く。午後のセッション開始時には、一部の深い水溜まりを除いてほぼドライアップしたものの、その後再び雨が降り、路面は再び湿り気を帯びた。チームにとっては何を優先してテストするか判断が難しい一日となった。前日にトップタイムを記録した名古屋工業大学は1日目のみの参加で、2日目は不参加。バッテリーの充電やマネジメントのため走行時間が限られるEV勢に対し、ICVの岐阜大学、そしてCNFでの走行・試験を進める福井工業大学が比較的多く周回を重ねる展開となった。


前日からNewタイヤでの評価を予定していた岐阜大学は、コンディションを見極めて投入を見送り、セット確認を中心としたメニューへ切り替えた。ウェットタイヤの内圧確認やエアロ評価など、臨機応変に走行時間を活用する。エンジニアは、「New(タイヤ)を入れたかったが、雨が長引いてしまった」「ウェットタイヤは水量に合わせて、内圧を変更して、いけるところを探した」「また、エアロは大きく変わっていないが、昨年評価できていないこともあって、中高速で評価できるエコパでフラップの効果など確認した」と説明する。闇雲に周回を重ねるのではなく、限られた走行時間と評価項目を組み立てながら消化する、エンジニアの上手さが光る。
セットアップについては、「今回は、リアに対してフロントが弱いところの改善を狙っていた」「昨年大会は、トラクションでリアが弱いところをカバーするセットで持ち込んだら、アンダーがひどくなってしまった」「今年は、トラクションを改善しつつも、フロントに寄せられるように進めている」「Usedでの走行だが、セット自体は良いところにまとまってきた」と手応えを語る。その言葉どおり、ウェット路面でも十分なトラクションを確保しながら、フロントを引きずらないバランスを見つけつつある印象だ。一方で、前日も課題に挙がった「舵を当てて待つ時間」についても意識しており、「昨年はMコーナーがきつく、ラインが1本しかないような状態だった」「次のテストに向けては、Mコーナーや、ヘアピンといった舵の深いところで、フロントが粘るように改善してきたい」と語る。「今年はシェイクダウンも順調にいって、走れなくなるようなトラブルも無く、上手く行っている」「ファイナル6を狙う上では、もう一歩、速さが欲しいところ」と、さらなるレベルアップを見据えた。チームはこの後、富士スピードウェイでのテスト、さらに関西勢のホームである大阪・泉大津フェニックスでのテストを控えており、ライバルからの視線も一層強まりそうだ。



今回のテストで大きな進化を見せ、ライバルや関係者から注目を集めた山梨大学。2日目は前日とは異なり、やや余裕を持った時間の使い方となった。チームは、「充電器を持ってきていないこともあって、午前中は走行を見送った」と説明。午後からコースインすると、ドライバーを交代しながら難しいコンディションで評価を進めた。途中、コース上でストップする場面や、スラロームでマシンが暴れる様子も見られたが、チームは必要なトラブル出しができたと冷静に受け止める。「低電圧系のトラブルで、トルクがかからなくなることもあったが、ここでトラブルを出せたのは良かった」「前日から、アクセル操作に対して、トルク曲線を変更して効果の確認もできた」「路面の難しさもあったが、膝のサポートが不足しており、意図しないところでアクセルを開けてしまうなど、ドライビングの難しさもあり挙動が乱れることもあった」と振り返る。前日は「まず走る」ことを優先した印象だったが、この日は一歩踏み込んだ評価ができた一日となったようだ。
ここまでの歩みについては、「当初はゴールデンウィークのJARIへの参加を予定していたがトラブルで行けなかった」「その後、5月の中頃には、シェイクダウンが完了して、ここに持って来られている」「チームとしても良い状態にあるので、なんとか上位チームに食らいついていきたい」と意気込みを語った。



例年以上に苦労している印象の名古屋大学。前日の夕方にエコパへ到着し、お披露目となったマシンは、多くのライバルや関係者が取り囲む注目ぶりだった。その後、短時間で準備を進め、ブレーキテストからコース1周まで持ち込んだ現地での対応力はさすがと言える。ただ、その際はトラブル対応を優先し、本来の四輪駆動ではなく二輪駆動で走らせていたという。
チームは、「1週間前から出ていたトラブルに対応しきれず、昨日は遅れてしまった」「インバータと、あとはバッテリーにもトラブルが出ていた」と説明。2日目に向けて本来の四輪駆動で走行するため修正を進めたが、マシンが会場へ到着したのは14時ごろ。そこからも準備に時間を要し、コースインは16時を過ぎた。最初の走行では1周できずにストップ。ドライバーを交代して再びコースへ送り出したものの、やはり走行中にストップしてしまった。
苦しい状況が続く一方で、マシンのポテンシャルは感じ取れたようだ。「昨年よりも乗りやすさをある」「スナップしないし、コーナーMIDでの旋回姿勢を作りやすい」「制御は昨年のままなので、今年のフットプリントの変更が効いていそう」と語る。優勝候補の名古屋工業大学についても、「名工、速い(笑)」と苦笑いを見せつつ、「(名工の)ドライバー次第ではあるが、見えないようなところではない」「次回、富士では名工も来るので立ち位置を確認できるようにしたい」と、ライバルをしっかりと見据えていた。



1日目、2日目ともに雨に見舞われ、不安定な路面コンディションとなったエコパ合同テスト。ポテンシャルや現在地を確認したい各チームにとっては、不確定要素が多く、判断の難しいテストとなった。これはエコパに参加しなかったライバルチームにとっても同様だろう。大会で直接戦う相手の動向は気になるものの、雨という条件が加わったことで、「速いかもしれないが、実際のところはよくわからない」という、どこか消化不良な印象を残したはずだ。
大会まで残されたテストは、いよいよ数えるほどとなった。7月11〜12日には関東・中部合同の富士テストが行われ、同日には泉大津テストも開催される。さらに泉大津では翌週以降もテストが予定されているとのこと。各チームの勢力図は少しずつ輪郭を現し始め、大会本番へ向けた緊張感も着実に高まりつつある。
1988年生まれ。大学在学中に学生フォーミュラに参加し、卒業後は自動車業界を経験。現在はモータースポーツを主軸とする技術ジャーナリストとして活動する。学生フォーミュラを起点に、競技車両の設計思想や製造の現場、競技を支えるエンジニアの思考を取材・執筆。技術と競技のあいだにある「それを作る人たちの思考」に関心を持ち、現在は国内外のレース車両開発や人へと取材領域を広げている。

