2025年大会エントリー間近、クラス分けで変わる戦い方と見え方、面白さは一層増していく【学生フォーミュラ】

いよいよ、1月20日から学生フォーミュラ日本大会2025のエントリーがスタートする。昨年の80チームから90チームへとチーム数の上限が拡大され、国内新規チームにも注目だ。そして、今年最大の注目ポイントはクラス分けだ。これまではICV(内燃機関車両)とEV(電気自動車)の区別なく総合順位がつけられていたが、今年からはICV、EVそれぞれに順位が付けられることになり、その競争の激しさがさらに加速する。EVクラスにおいては、これまでICVチームに挟まれていたEVチームが独立してリザルトを作ることになり、ライバル同士の競り合いがより鮮明に浮かび上がる。例えば、昨年の結果をEVチームで整理してみると、名古屋大学EVの背後には名古屋工業大学EV、東京大学EVの背後には上智大学EVと、ライバル同士が接近してくる。単に順位が繰り上がるだけの小さな変化だが「あと1チーム抜けば優勝」「あと1チーム抜けば3位の表彰台」といったように、EVクラスを一気にコンペティショナルにしてくれそう。もちろん逆も然り。これまでなら10位から15位に落ちるようなミスが、今年からは3位表彰台を逃すミスに変わる。繰り返すが見え方が変わるだけの変化だが競技に与える影響は大きく、緊張感が増す。また、静的審査でもクラスごとに順位がつけられることが予想され、クラスごとにスコアリングする中で点差がより接近し、得をするチームが出てくる可能性も。

さて、まずは昨年大会を参考に今年の注目チームを。昨年3連覇を達成した京都工芸繊維大学が、ついに4連覇に挑むシーズンが始まる。まさにチームにとって「ここまで来た」と感じているシーズンだろう。そして、クラス分けは京都工芸繊維大学にとって大きな追い風になると予想される。昨年、仮想のライバルだった名古屋大学が事実上いなくなる。これを踏まえつつ、彼らの計画最終年のマシンは熟成されて、より手堅い方向で準備をしてくるだろう。大げさな言い方にはなるが、4連覇に向けて鉄壁の守りで臨む彼らを切り崩すのは容易ではなさそう。その京都工芸繊維大学を捕らえると宣言したのは大阪大学、今シーズンの目標に優勝を掲げてきた。ここまでの大阪大学を見ていると、仕掛けるなら今年がベストなタイミングだろう。2023年大会までの悪い流れを断ち切ることに成功した昨シーズン、チームはしっかりと地に足つけて成長してきた。そこにドライバー2名の速さが揃い、エンジニアも経験値を積んできて今シーズン総合力では最も高いという予想だ。ここで捕らえなければ次のチャンスはいつ来るかわからない、今年の大阪大学はそれほどの気合を感じる。

もちろん大阪大学だけが優勝を狙っているわけではない。毎年速さと安定感を誇る日本自動車大学校も京都工芸繊維大学の背後に迫る存在だ。昨年はアクセラレーション、エンデュランスは速さを見せた。今年もその速さが衰える姿は全く想像出来ない。もちろん安定感があるからと言っても彼らがその位置で留まることはなく、2022年総合3位、2023年2位と来て2024年は4位、とあと一歩届かないシーズンを過ごして勝利を渇望してる日本自動車大学校はむしろ勢いは増す方向だろう。そしてもうひとつは神戸大学。昨年、静的動的ともに確実に点数を積み上げて総合順位を上げてきたチームだ。この、大きく取りこぼすことなく戦える力こそチーム力と呼ばれるものだろう。チーム力を培ってきた彼らは間違いなく昨年大会で手応えを感じているはず。成功体験をしたチームは往々にして勢いを増す、もう一度あの体験をしたいと思うからだ。神戸大学もこれに漏れず今年勢いを増してくる予想だ。

ここまでどちらかと言えば攻めのチームを上げてきたが、昨年エンデュランスで速さを見せた岐阜大学は守りのシーズンになると見込み。ここまで速さを請け負ってきたエンジニアとドライバーが卒業で一度に抜けてしまうからだ。どのチームにも訪れる世代交代のタイミング、上位チームのほうがこの影響が大きく順位に響く。卒業するメンバーが出来ることは速いマシンの画を残すことだけ、それを現実にするのは残された次の世代のメンバーだ。新しい世代になった岐阜大学、ここが踏ん張りどころになりそうだ。今年、岐阜大学が迎える世代交代を一足先に経験したのは工学院大学。一昨年は総合4位に入った工学院大学だったが、主要メンバーが卒業して迎えた昨年は車検落ちという地獄のような大会を味わった。そんな中でもフォローアップ走行で上位勢と遜色ない速さを見せて、彼らとしてもポテンシャルの高さは実感しただろう。ここからチームを立て直してどこまで上がってくるか、注目である。

昨年大会マシントラブルに泣きながらも総合2位につけた名古屋大学、EVクラス優勝候補であることは間違いないだろう。これまでは総合優勝を目指して、京都工芸繊維大学に対する戦い方をしていたように見えたが、クラス分けによって戦い方が変わってくるかが注目される。また冒頭に書いた通り、静的審査のスコアリングによっては後ろを気にしなければいけなくなりそう。名古屋大学の背後につけるのは名古屋工業大学。EV転向3シーズン目、着実にICV時代のポジションに戻してきている。昨年大会で速さを見れたのはエンデュランスのうちの1周くらいだったが、その車重を感じさせない整った動きでポテンシャルを感じさせた。また、大会後にエコパで開催された合同テストでは多くのテストメニューこなしていた様子で、名古屋大学に迫る。

まだまだ、マシンの影も見えないチームが多いがここから各チームがいつシェイクダウンしてくるのか、どういう姿でシェイクダウンするのか、そして走り出してからどんなタイムを出してくるのか、チームの動向とその背後にある思惑を想像しながら今シーズンもじっくり楽しんでいきたい。