苦しいのはみんな一緒【北海道大学】

学生フォーミュラをする上で有利なエリアはどこか。大会会場に近く日本大会の最前線を行く中部エリア、もしくは走行場所も多く強豪が揃う関西エリアあたりか。逆にロケーションでハンデを負うのは九州、東北エリア。日本海に面したチームも大会会場での走行機会が少なく、他チームとの情報交換も少ないと聞く。



そして圧倒的に不利な状況にあるのは大会会場から約1400km、国内のチームの中で最も遠くに位置する北海道大学だろう。そしてこのチームに与えられた試練はそれだけではない。2019年大会はエントリーから漏れ、エントリーを果たした2020年大会は中止となり2度の『大会の無いシーズン』を過ごしてきた。その結果、大会を経験したことがないメンバーで『2021年大会』という日本大会史上最も難しい大会に挑むことになる。
そんな状況にあってもいつもと変わらず車両を製作し、先日十勝スピードウェイで5日間のテストを終えた彼らのタフさは半端ではない。今回はそんな北大学生フォーミュラチームをピックアップする。

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「前年度まではエントリー開始翌日に申し込んでも大丈夫だったこともあって、当日の午後に申し込んだらWaitingになってしまったようです。」「例年に比べて海外からの参加が多かったことも原因かも知れません。」伝え聞く2019年大会エントリーの顛末について話してくれたのは当時まだ入学もしていなかった現在のチームリーダー。ライバルの辞退もあってWaitingリストの5番手あたりにいたチームはコストも提出し、車両製作を続けて大会準備を進めていたがそれ以上繰り上がることは無かった。ただ車両は走る状態にあったため例年通り走行テストをして2019年シーズンを過ごしたという。「2019年の車両はスキッドパッドが前年から速くなっていました。」と車両のポテンシャルを感じていただけに勿体なかった。

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そして2020年、今度は国内全てのチームがこれと同じシーズンを経験することになる。「前回(2019年)は自分たちチームの責任だったのでまだ納得出来ましたけど、今度は違っていました。」「活動の動機づけがされない、ショックでした。」という言葉はやはり重い・・・。ただ「なんか、怒りも覚えましたけど、『みんなしんどい、苦しいのはみんな一緒』と切り替えて努力できたと思います。」と話すのはエアロ担当。これこそ、このチームの魅力だと言える。

昨年3月から活動がストップしていた彼らにも少しずつ追い風が吹き始める。北海道大学の運動部が中心となって課外活動制限緩和を求めた署名運動が始まり、7000人もの署名が集まったのだ。これをきっかけとして学生フォーミュラの活動制限も緩和され2020年7月からはほぼ通常通りの活動が出来たという。ここから車両製作、十勝での走行テストへと繋がって行く。(※現在は対面での活動が制限されている。)

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彼らの車両はパイプフレームに4気筒エンジンを横向きに積み、10インチタイヤを履く。基本的には2019年からの流れを汲み旋回性能向上させた2020年車両を2021年も継続運用するとのこと。エアロパーツは2018年に一度前後にウイングを搭載するが、2019年からはそれを下ろしてアンダーパネルでの効果を見込んでいるとか。「(十勝に持ち込んだ車両の完成度は)大体50〜60%くらいで、まだレギュ対応しなきゃいけないところも状態です。」とのこと。

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