這い上がった先に見るは総合優勝【工学院大学】

さて、チームは2021年公式記録会で同日参加の日本自動車大学校や京都大学にオートクロスで7秒差をつけられて終わるのだが、2022年大会ではその日本自動車大学校の0.8秒後ろにまで迫った。そんな2022年マシンについても宮田氏が最初に口にしたのは「壊れない車両」。これだけ上位に迫ってきたのだからさぞ多くの『弾込め』をしてきたのだろう、と想像していただけに意外な回答だった。

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2022年マシン、日本大会

 実際にはDREXLER製LSD導入やサージタンクに変更を加えている。特にサージタンクはアルミ溶接構造に戻され、そこに挿さるリストリクタが『シャークティース』形状になっている。「渦を発生させて圧力損失を減らす狙い」「過去にライバルチームがやっていて参考にした」「(シャークティース)あれ、いいですよ(笑)」とのこと。

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リストリクター、シャークティース形状
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サージタンク内部

エアロデバイスではこの形状を度々目にすることがある。現行シビックタイプRリアスポイラー裏面、GT300に投入されるapr LC500h GTのサイドスカート前端にも同様にシャークティース形状が採用され、渦を発生させる狙いはおそらく同じ。

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引用:https://www.honda.co.jp/ACCESS/civictype-r/exterior/tailgatespoiler/
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引用:https://www.tokyoautosalon.jp/topics/detail/100116

 また「サージタンクは容量から決めたというより入り口から広がる形状のところで圧力損失になる空間を減らす形状を検討した結果今の容量になった」とのこと。ライバルチームではパワーとレスポンスをバランスさせるサージタンクを容量ベースで設計するところも多いのに対して興味深い回答、宮田氏の拘りが窺える。

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インテークシステム

 こうしたマシンで戦った2022年は総合7位に入りチーム史上最高順位を獲得した。84位から4年を掛けて驚異的なポジションアップを達成したことに対しても宮田氏は「結果が出て『しまった』」「ライバルの動向があっての結果だと思っている」「大会直後はチームも少し浮かれてしまったので一喝した(笑)」と前述の通り彼らしい反応だ。

 先日某報告会でその姿を見せたという工学院の2023年マシンについて聞いた。「2022年はテンプレート(レギュレーション)の関係でステアリングの位置が決まっていて、バンプステアが付いてしまう設計で、ステアリングも重かった」「大会後にバンプステアやスクラブ半径のテストをして好感触が得られた」として操舵系で得られたものを盛り込んでいくとのこと。

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大会後の富士カースワップ、元横国エースドライバーがドライブ
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大会後の日本自動車大学校での合同テスト

2022年にアルミ溶接構造にしたインテークは再度3Dプリンタで製作し、ドライバー頭上から吸う形状からマシン後方に垂れた形状に変わる。また昨年時間切れで搭載出来なかったエアロも今年は載せる意向で「今年は軽く剛性があるものを作りたい」「まずは解析通りの効果が見込めるよう綺麗に作りたい」とのこと。フレームのフロントセクション変更に伴ってドライバーポジションは少し起きる方向に変わるとか。他にも変更箇所多くこれまでのアップデートとは異なり大きくマシンが変わってくる予想だ。

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2023年マシン
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2023年仕様エキゾースト
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2023年マシン
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2023年マシン

2023年マシンについて「2019年からマシンを作ってきたがまずはマシンが完成すること、そして走らせることを優先してきた」「2021年から昨年にかけて集めてきた材料を元にやっと車両設計らしいことが出来た」と宮田氏は言う。その手応えは確かなようで「オートクロスでは大幅なタイムアップを狙う」「京工繊の真後ろにはつけたい」「総合3位を目指す」とのこと。2大会欠場からのチーム再構築、さらにはコロナ禍の影響を受けたチームの立て直し、どん底の84位から7位にまで這い上がってきた工学院とそれを率いる宮田氏は2023年手強さを増し、攻めの姿勢で進行中だ。