YouTubeを拡充させるも苦慮する広報戦略

昨シーズン、積極的にYouTubeを活用して広報活動を進めてきた学生フォーミュラ大会運営。これまでに無かった企画やメインコンテンツである大会映像にも趣向を凝らしコンテンツの拡充が見られた。今回はYouTubeを活用した広報戦略について学生フォーミュラ大会関係者に話を聞いた。

YouTubeの企画を実行してきたのは学生フォーミュラ日本大会組織に属する「広報戦略委員会」という組織。後に述べる2018年、2019年とBS特番を仕掛けた認知度向上WGという組織を前身としており、長期的な学生フォーミュラの広報PR戦略を実行していくため名前を新たに発足された。「基本的には学生ファーストで、学生たちの困り事を解決していくことを第一の目的としている」「困り事で言えば、中位以下のチームの部員不足」「このために新入生勧誘で使えるような動画を増やしてきた」「そのために様々な審査がある学生フォーミュラをなるべくシンプルに伝えられる動画にした」「まずは『学生フォーミュラって楽しいのだ』ということが伝わることを期待している」と話すように、広報戦略のターゲットはこれから学生フォーミュラをやってくれる高校生や大学の新入生だという。

引用:https://blog.jsae.or.jp/formula/3660

そうした思惑から昨シーズンは新たな試みが実行された。女性アイドルグループ『高嶺のなでしこ』『たけやま3.5』を大会レポーターに起用し、大会の現地レポートやチーム訪問レポートが展開され、これまでの学生フォーミュラには無かった企画に学生たち、関係者からも驚きの声が上がった。「女性アイドルグループの起用は映像制作会社からの提案から始まった」「アイドルと学生フォーミュラの競技はかけ離れている印象もあったが同世代(ターゲット層)に響くのでは、という狙いから進めていった」という。

またレーシングドライバーからの応援メッセージ動画も前年に引き続き制作された。2021年にはF1チーム『スクーデリア・アルファタウリ』に所属する角田選手から学生たちに向けた応援メッセージが届いた。これに続き昨シーズンはスーパーフォーミュラ、SUPER GTで活躍する関口選手、坪井選手がこれに出演。「(昨シーズンは)大会スポンサーであるトヨタさんの計らいで(プロドライバーの出演が)実現した」「モータースポーツや自動車業界を目指す学生たちとっては大きな励みになると思う」「これからも続けていきたい」とのこと。

広報、PRといった部分で度々「鳥人間コンテスト」と比較される学生フォーミュラ。実際に活動する学生たち目線で見ればものづくりを通して学ぶという点では近しく比較対象に上がるのも無理はない。学生フォーミュラに参加する学生からは「鳥人間みたいにテレビで取り上げて欲しい」という声も聞かれる。しかし大会運営側から見るとそこには大きな違いがあるようで学生フォーミュラ大会関係者は「鳥人間コンテストはテレビ放送局が主催で『エンタメ』と明言されている」と話す。鳥人間コンテストはテレビ放送局が主催しているイベントであって、番組を成立させることが主催の使命と言って良いかもしれない。当然放送枠も確保され2021年は木曜日の19:00-20:54、2022年は水曜日の19:00-21:00といずれもプライムタイム(ゴールデン帯)と言われる時間帯に設定されている。