6年振りのカーナンバー1を背負う新エース【京都工芸繊維大学】

昨年大会のオートクロスで京都工芸繊維大学は2位以下に1.5秒以上の大差をつける圧倒的なタイムで1位を獲得した。その時マシンをドライブしたのはカートでのキャリアがあるエースドライバー、そのドライバーも今年3月には卒業してチームを離れる。そして今シーズンから新たにエースドライバーを務めるのが昨年大会でエンデュランス前半を走った久保舜哉だ。今回は新しいエースドライバーとして2017年以来6年振りのカーナンバー1を背負うこととなった京都工芸繊維大学・久保舜哉をピックアップする。

京都工芸繊維大学・久保舜哉

エンデュランスではキャリアのあるドライバーと遜色ないタイムで走った久保だが意外にもモータースポーツのキャリアは無く、カートに乗ったのも大学に入ってからだという。「車の運転に興味はあった」「入部して初めてカートに乗って『カートってこんな楽しんだ!』と思った」と話す彼はカートを使ったチーム内セレクションの後、学生フォーミュラマシンでのドライバーテストを経てエンデュランスドライバーの座を獲得している。ドライバー志望のメンバーが少なかったというが、もちろんそれだけで強豪チームのドライバーが出来る訳はない。「学生フォーミュラのマシンには2回生の時に初めて乗った」「(ハンドクラッチによる)発進を一発で出来てチームに驚かれた(笑)」という。後にも述べるが久保の最大の売りはこの冷静さだろう。セレクションではタイムはもちろんだが、一発アタックに臨む冷静さも高く評価されたと聞く。

京都工芸繊維大学・久保舜哉

小中高とサッカーに打ち込んだ彼はサッカーと学生フォーミュラの共通点を語る。「全体を傍観しつつ(雰囲気良く)纏めていくところは共通していて、このチームでも役に立っている」マシンを仕上げて行く上ではエンジニアとの関係も重要になってくるが「トラックエンジニア、エンジンエンジニア共に年下で多少コミュニケーションでは配慮する(笑)」「ただ言いたいことは言って、和気藹々とした雰囲気作りを心がけている」とのこと。こうしたところも上級生と下級生が入り交じりながら意思疎通を図るチーム競技と通じるところがある。一方でサッカーとの違いも。「学生フォーミュラはコースに出ると一人になる、何をしようがバレないというか(笑)」「それだけにどうやって自分を制御していくかが難しくなる」「自分のもっと行きたい欲を抑えながらチームの指示通り走る必要がある」「緊張しない訳ではないが、程よい緊張感の中で自分のメンタルをコントロールできる」と語る彼の言葉にはどことなくスポーツで馴染みのある表現が並ぶ。こうした状況の見極めと自分の制御が彼の冷静さを作り上げていることは間違いなさそうだ。

「乗り始めた頃にパイロン飛ばしまくった」「スラロームのパイロン全部飛ばして、これ大丈夫か?と思った(笑)」「やはりキャリアのあるエースとの差はあった」と話すように技術面では多少の苦労をしてきたようだ。これは何も久保に限った話ではなく国内学生フォーミュラチームの至るところで似たような状況が聞かれる。各チームに1人くらいはモータースポーツキャリアのあるドライバーが入部してくるのだが、2人目がなかなか揃わない。結果としてチーム内からドライバー志望のメンバーを募って乗せる。当然技術的な差が現れ、2人目には大きな成長が期待される状況だ。こうした状況に対して久保は「ドライビングノートを記録してその都度運転にフィードバックして現状(1秒差以下)までになった」「そのノートは大会時にも持参していた」「毎回中川さん(2022年エースドライバー)とのタイム差は気になっていた(笑)」「セッティングの決定権はトラックエンジニア、最後はチームにあって自分の要望が通らない時もあった」「それでも(自分が好みのセットじゃなくても)止まっていてもいけないので運転の工夫はした」と話す。エンデュランスタイムを押し上げた要因に彼のハングリーさがあったことは言うまでもない。

2023シーズン、真夏のテスト走行
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