YouTubeを拡充させるも苦慮する広報戦略
一方、学生フォーミュラは自動車技術会が主催で大会の開催とそれに参加する学生たちの人材育成が主な使命だ。そんな学生フォーミュラにとってテレビ放送は広報PRの選択肢の1つであって、テレビ放送をメインとする鳥人間コンテストとはそこで異なる。さらに放送局がついていない学生フォーミュラにとってテレビ放送のハードルは高い。「地上波の枠取りは極めて難しく、まず取れない」「取れても深夜枠で、数千万円単位の予算が必要になる」とのこと。とはいえ広報面でテレビ媒体の効果は大きく学生フォーミュラも挑戦した過去がある。冒頭に述べた認知度向上WGが2018年、2019年とBSに特番を打った。「2018年はBS朝日での放送で、これは1本限りで再放送も無かった」「2019年はBSフジで放送した」「当時からBSフジはニュース番組をすぐにYouTubeに上げたりしていてインターネットとの親和性も高い」「そうした背景もあって2019年は(学生フォーミュラ特番の)YouTube掲載が実現できた」とのこと。ただ、それでも番組制作には1000万円規模の予算を要しコスト面で厳しいという。そうした理由から学生フォーミュラ大会、広報戦略の軸足がYouTubeに移っていくことは必然であったといえるだろう。
昨シーズン、YouTubeを拡充させてきた学生フォーミュラ大会、広報戦略委員会だったが実際にはその効果について苦慮する部分も多いようで「動画を増やしたが思っていたよりも(再生回数が)伸びなかった」「ほとんど視聴者が関係者という印象」「ダイジェストも充実させたが編集に時間をかけてしまって、9月の大会に対してダイジェスト動画を出せたのが年末になってしまった」「密着動画は該当するチームのアピールが出来て良かったが、それ以外のチームにとってはメリットが薄かった」「前澤さんのプロジェクトで千葉大学さんを取り上げた動画が話題になって何万回再生(※実際には180万回再生)もされていて、それを視聴した人が我々の動画も見に来てくれると期待したがそうでも無かった」「面白い動画は見てくれるがそうでないとなかなか見てくれない」と振り返った。
今シーズンに向けては「近々学生たちが新入生勧誘で使えるような動画を出す予定」「今年はPRに絞って注力していく」とのこと。またYouTube以外にも「各イベントに学生フォーミュラ日本大会のシミュレーターを使ったPRもしていく」という。このシミュレーターはシミュレータソフト「Assetto Corsa」を使用して大会会場であるエコパのコースを学生フォーミュラマシンで走ることが出来るというもので、2021年に大会運営と東京農工大学の学生フォーミュラOBとで開発された。「小学生向けの設定にも出来るので、各イベントで小学生などに対してもPRして裾野を広げていきたい」と話していた。
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