EV移行のハードルの高さ【横浜国立大学】

2022 学生フォーミュラ日本大会は8月23日からオンラインでの静的審査が始まった。デザイン審査を皮切りにプレゼンテーション、コストの順で審査が進んで行く予定だ。その静的審査が始まる前日、横浜国立大学は人員不足とEV移行が難航したことを理由に2022学生フォーミュラ日本大会の参加辞退を正式に発表し、これで2大会続いての大会不参加となった。このニュースは審査書類が提出されていないことから6月頃には囁かれており、7月にはエントリーリストに辞退の文字が並んでいた。

例年、マシンや審査の準備が間に合わず参加を辞退するチームは少なからず出てくる。静的審査だけだった昨年大会でも辞退するチームがいて、参加を辞退することは決して特別なことではない。では何故横国の件を取り上げるのか。その理由は大会常連で上位に居続けたチームであったこと、そして昨年からEV移行に取り組んでいたことが挙げられる。常連チームがEVに挑み2大会連続で参加を辞退するに至った経緯を聞いた。

横浜国立大学フォーミュラプロジェクトは2005年に創立、言わずと知れた関東エリアを代表する常連チーム。長年ホンダ製4気筒エンジン縦置き+シャフト駆動というパッケージで参戦。2019年大会ではオートクロス、エンデュランスともに2位を獲得し総合でも準優勝という成績を残した。現在は学部1回生が4名、2回生が10名、3回生が1名の計14名が所属している。(リンク:横浜国立大学フォーミュラプロジェクトチーム公式Twitter)

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『大会中止からEVへ舵を切る』

話は2020年大会中止が発表された時点にまで遡る。当時、彼らの活動状況について「製作が進んでいた2020年大会向けのマシンはお蔵入りになる」というところまでの話を聞いていたが、実はこの時既に横浜国立大学はEV化へと舵を切っていた。「2019年大会で総合2位を獲得したメンバーも含めEV化を推進していたと聞いている」「早めにEV化した方が将来的に有利になるんじゃないか、という考えもありEVでの総合優勝を目指した5カ年計画を立てた」とのこと。ただ2020年はコロナ禍の影響下、活動制限がかかり学内の加工場も使えない状況で彼らはEVチームとしての土台づくり、諸元検討に時間を費やした。しかしここで2022年大会参加辞退にまで繋がる問題が起こる。新入生勧誘が出来ないでいたのだ。全国の学生フォーミュラチームが同様な事態に陥っていて横浜国立大学も例外ではなかった。結果的にこの時の新入部員は1名、この1名が2022年大会をメインで戦う世代だった。こうした状況の中、2021年大会のエントリーが迫ってくるが「EV化を始めた時から2021年大会は出場予定はなかった」と話す通り横浜国立大学はエントリーしなかった。

『無理だよね、ごめんなさい、という感じだった』

2022年大会を照準に定めEVの詳細設計へと移ったチーム、入部したばかりの1回生も担当を持った。3ヶ月程をかけて基本的な車の知識やCADの操作等の勉強をしていた1回生だったが、それでもサスペンションジオメトリーやフレームを1から設計するとなるとハードルが高い、況してやICVから諸元やレギュレーションが変わるとなると、それまでのノウハウが通用しない部分も出てくる。暗中模索の中で設計が始まった。例年であれば年末には設計が完了するようだが「21年の年末の段階では3割程度しか終わっていなかった」「日程を引き直して再凍結(設計完了日)を設定してもそれでも終わらなかった」と話すように絶望的な状況。メンバーは「設計が終わらない怖さがあった」「授業や課題がある中で(設計で)わからないことにぶつかると放置しがちになった」「先輩の姿を見ていなくて熱量や危機感をもてなかった」と振り返る。

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そして年が明け、2022年2月になった。彼らが使用している加工場は春休み以降は授業でも使用するため製作が進まなくなる、結果として春休み中にマシンが完成しないと大会に間に合わないという制約があった。2月の時点でも設計が完了しておらず、製作に入れる状況になかったチームはここで2022年大会参加辞退を決断する。大きな決断ではなかったか、という問いに「メンバーが状況を理解していて、みんなで『無理だよね』『ごめんなさい』という感じだった」とチームリーダーは答えた。

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苦戦する彼らにサポートが無かった訳ではない。院試終えた先輩やOB,OGらからアドバイス等は例年以上に手厚かったという。経験の少ないメンバーにとってはミーティングひとつ取っても手探りだ。進捗の確認から、タスクと予定の確認、納期遅れが発生した時の原因究明と対策等は先輩たちのアドバイスがあって初めてやり始めたという。それでも「もっと早く知りたかった!」ということは多いようで、設計に工数がどれくらいかかるのか(かけていいのか)や部材部品の納期感、製作にかかる工数予測等は早い段階で知っていれば成り行きのスケジュールにならなかったのでは、という声も聞かれた。そうした中でも今年7月に設計が完了、現在は10月の接地、年内のシェイクダウンを目標に製作中だという。

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ホンダ製エンジンを使用してきた横浜国立大学はEV化に向けてもホンダの支援を受ける。ホンダのNSXやLEGENDに搭載される2軸出力モーター(リンク:ホンダ製モーター詳細)をリアに搭載、ダイレクトドライブ機構を採用するという。キャリアのあるドライバーを中心にマシンを仕上げて速さを見せた2019年大会に対し、EVは出力が制御しやすいメリットを活かして「場面を選ばずに速いマシン」をコンセプトに、様々なコンディションやドライバーに適応出来るマシンを目指すとのこと。計画当初はICVに対して70~80kgの重量増を想定していたが、今後見直しをかけていくとのこと。

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