2022 エコパ合同テスト#1
2022年最初の学生フォーミュラ合同テストが5月14日に静岡県はエコパで開催された。前日から当日朝まで降っていた雨の影響で午前はダンプコンディション、午後はほぼ乾いてドライコンディションでの走行となった。富山大学は新車、岐阜大学と福井大学は昨年のマシンを持ち込んだ。神奈川工科大学もマシンを持ち込んで走行の予定だったが、運搬中のトラブルにより走行を取りやめている。参加予定だった静岡理工科大学は安定走行の目処立たずキャンセル、大阪大学もエコパでのテストをキャンセルして同日泉大津フェニックスで京都工芸繊維大学と走行テストを実施している。
『阪大と工繊は泉大津テストへ』
大阪大学は泉大津のテストに昨年マシンで参加、エアロは外され偏平率の高い10インチタイヤが装着されていた。また京都工芸繊維大学は早くもほぼフルエアロ状態(サイドカウル未装着)での走行。リアウイングは昨年のものを流用していたと見られる。フロントウイングとフラップは昨年の3D形状からフラットな形状に変更され、エンドプレートも後端が切り欠き形状に新調された。また後輪の前の衝立は小さくなり、サイドディフューザー後端延長上タイヤと車体の間に2枚のフラップが追加されている。両チームともいくつかトラブルも出たと聞く。この日、大阪大学に対して京都工芸繊維大学に5sec程のアドバンテージがあったとのこと。
『伸び代を発見することが出来た。』富山大学
全チームの中で最初にエコパで新車を走らせた富山大学は一昨年、昨年と変わらず好調、様々な事情で遅れが生じているライバル達の中にあってはそれが際立っている印象だ。富山大学の新車は基本的に昨年マシンからのブラッシュアップ。フレームが若干小さくなり、フロントダンパーレイアウトがプルロッドに変わっている他、ECUも新しいものに変わっている。
今回は事前のプライベートテストで感触の良かったセットで持ち込み、アライメントセット、タイヤセットを何種類か準備していたというが、当日はトラブル対応によりテストメニューを消化しきれずに終わる。「アクセル開度が高いところでストールする症状が発生し、その対応の燃調に時間をとられた。」とのこと。
本調子での走行が叶わなかったとはいえ久しぶりのエコパテスト、チームとしては一定の手応えがあったようで、「速度域の高いエコパで伸び代を発見することが出来た。」「大会に向けてはエアロデバイスの搭載やリム幅変更等を行い、更なるタイム向上を目指します。」と話す。富山大学のベストタイムは70.37秒、昨年の公式記録会のタイム75.069秒を大きく更新してポテンシャルを感じさせる走り出しとなった。
『トラブル対策をした’21スペック、新車向けテストも』岐阜大学
昨年は幾度と無くマシントラブルに泣かされ、公式記録会も未出走のまま終わった岐阜大学はここでようやく2021年仕様のマシンを確認する。「各パートの不具合は可能な限り修正し、トラブル対策を行った。」「基本的に載せる予定の部品が全て載った(2021年)大会スペック。」と話す。
高負荷でのシフト動作の他に冷却系の確認も実施。冷却系では水温の警告が発生し、途中でピットインする場面もあったとか。「警告水温をエンジンが壊れない程度の設定まで引き上げて凌いだ。」「冷却系を変更してから暖かい時期に広い場所で走らせるのがほぼ初めてで、今まで気付く機会がなかった。」とのこと。また新車に向けたテストも盛り込まれており、2022年新しくなる吸気系のためのデータ収集とスロットルレスポンス等の評価も行っている。
パイロンタッチのないタイムでは67secがベストタイムでこのエコパテストではトップタイム。走らせる時期は全く異なるものの公式記録会でみれば3番手のタイムだ。マシンの状態については「かなりアンダー傾向で左フロントはひどいグレイニングが見られた。」「(ドライバーが)捻じ伏せながら走っていたと思う・・・。」とまだ改善の余地がありそうだ。コメントの中ではライバル富山大学の走りについても触れ「スラロームが特にクイック、(スラローム区間では)まだ太刀打ち出来ない感じ。」とのこと。
『Newタイヤのグリップで問題が発覚した。』福井大学
岐阜大学と同じく昨年のマシンで参加した福井大学、このテスト最大の目的はドライバー育成とのこと。昨年、世代交代でコース周回経験のあるドライバーがいなくなったことが理由だ。「ドライバー2名ともに周回コース未経験の状態で昨年度の記録会にのぞんだ。」「今年度はドライバー育成にも力を入れる。」という。加えて、このテストにNewタイヤを投入している。「記録会にはUsedタイヤでのぞんだが、摩耗と劣化によりほとんどグリップしなかった。」「2021年車両の本来の性能を評価するためニュータイヤを持ち込んだ。」とのこと。車両評価には舵角センサ、輪速センサが追加されている。
準備を施したマシンだが、走り出す前からエンジンの始動不良が発生する。現在搭載するエンジンに変更してから始動不良に悩まされているらしく「燃調セッティングをしてテスト走行にのぞんでも当日は元の状態に戻る、ということを繰り返している。」「今回は事前に試走会を実施してのぞんだが、なかなか始動できない状態が続いて走行開始が遅れてしまった。」となかなか苦しい状況のようだ。
なんとか走行を開始するが3周したところで次は足回りのトラブルが発生、走行を中止することになる。リアプッシュロッドのロッドエンドが破断したのだ。「ロール時にベルクランクアームとプッシュロッドが干渉してしまった。」「(Newタイヤを投入し)グリップが高くなってロール量が大きくなったことで問題が発覚した。」という。
貴重な3周の中で出したベストタイムは69.3秒、こちらも公式記録会の76.441秒から大きく更新した。ドライバーは「(Newタイヤのグリップにより)コーナリングでの粘り、脱出時のトラクションの良さを感じた。」「スラロームのような素早い切り返しの場面でもリアが安定していて、パイロンぎりぎりまで攻めることができた。」と好感触。ただ8月のエコパテストには参加しない予定らしく、ドライバーはエコパの経験が浅いまま大会を迎えることになりそうだ。
福井大学の新車は7月末シェイクダウン予定とのこと。当初はGW前にシェイクダウンを行う予定だったが、3月は学内全ての部活動が活動禁止となりマシン製作が出来なかったという。ようやく4月から活動再開するが進捗は芳しくない。「足回りとフレームの完成率が30〜40%といったところ。」「まだこれからステアリング系やパワートレイン系の作業が残っているため、完成には時間がかかりそうだ。」とのこと。
次回のエコパ合同テストは7月23、24日に開催予定、両日程で20チームがエントリーしている。まだまだ活動が思い通りにできないチームもいるようだが、なんとか7月までにはマシンを完成させて元気に走らせてほしい。