目まぐるしく変わるウェットコンディション、京工繊と工学院が快走【富士合同テスト】

11時頃から降り出した雨で路面はフルウェット、さらに午後のセッション開始間際には霧も出てきて走行が心配された。ただ雨脚は弱まり、水量は減ってきていたため12時30分頃には走行を開始、京工繊がドライバーを乗せて最初にコースイン。それに工学院が続き、しばらくはこの2チームが交互に走る状況が続く。これに加わってきたのが東京農工大学。ヘルメットからしてモータースポーツのキャリアが漂うドライバー(後から聞くと全日本カートのドライバーとのこと)が乗り込んで周回を開始。日大理工、そして千葉大がコースに出ていく。

積極的にコースに出ていたのはやはり京工繊と工学院。京工繊は午前から引き続きアンダーと格闘している様子。外から見ていても乗りづらそうな印象があった。それとは対象的にウェットの中でもフロントが入り、曲がることに苦労が無く見えた工学院。この印象はスラロームでも現れる。京工繊の方がやや後ろ重心で、リアの振り出しは少ない印象。工学院は回り込む動きは出るものの振り出したリアが止まらず、苦労する場面も。両チームともセットはまだまだこれから、というところだろうが、ウェットにぱっとマシンを出してこれだけテストが出来るのは素晴らしい。

「ターンインに関しては自分の思う方向に持っていけた」「ただ自分としては出口でフロントがもっと来て欲しい」と語るのは京工繊のエースドライバー。今回持ち込んだマシンはアンダー傾向が強く、ウェットの中これの解消に終始した印象だ。「スロットルを開けてないとすっと(フロントが)入ってくれるが、スロットルを開けていくとフロントの引っかかりが薄い」とのこと。それに対して午前中の工学院同様にレーク(車体前傾)をつける方向で調整を勧めたという「どれだけ変更するかにもよるが車高が一番効いた」「最後(水量が減ったところで)ちょっと確認したかったが無理でした」と話すようにセットの方向性が見えかけたものの、続きは次回のテストに持ち越されたようだ。

この日最もマシンの挙動が安定していて、最終的にはリアのどっしり感も作ってきた工学院は「低速低荷重コーナーでのマシンの動きに着目してテストを進めてきた」「そのためにステアリングジオメトリーの変更をするなどしていた」と話す。設計で大きく振ったジオメトリーを採用してきたという工学院、その点について「体感的には車両の動きが速く変えられて、ヨー立ち上がりは良く感じた」「ただ収束の部分がネガになってきた。と話す。前述の通り、これがスラロームでも現れたということだろう。このヨーの収束に対してはセット変更を加えて、最終的にスラロームや低荷重コーナーでもリアが止まる(ヨーが収束する)動きを作れていた印象だ。ウェットタイヤについては、「ほぼ始めて(ウェットで)乗ったが、意外と食っていて(グリップしていて)今日のマシンセットアップには向いていたと思う」「今回Newのウェットを投入したが、水量の増減に対してもグリップの差はあまり見られなかった」とのこと。

上の2チームに対して、午後はマシンの準備に手間取った千葉大はテストメニューを消化出来ないと判断したか、ドライバーテストに終始した印象。「昨年エンデュランス走ったが、自分の中でコースをあまり走れていないというのがあった」「今回はコースの練習をある程度積んでから来た」「スピンもあったが、(アクセルを)踏むべきところでは踏んで行けた」と話す。そういう意味ではドライバートレーニングに今回のウェットは適していたかもしれない。マシンについては「走り出し、高速コーナーは良かったが、低速コーナーで前に荷重が乗らなくて入っていかなかった」「セットは内圧を少し変えたくらい」とのこと。トラクションサイドではしっかり加速出来ている印象だったが、ドライバーが話す通り低速、低荷重コーナーでのフロントの入りに苦労する様子は外からでもわかった。8月の合同テストに向けて「ステア特性のセッティングがまだ出来ていないので詰めていきたい」「サイドウイングの建付けが精度や、路面干渉に懸念があるため仕上げていきたい」とのこと。もちろん上位は狙っていくと話してくれた。

前日シェイクダウンしたばかりながら、しっかり走っていた東京農工大のドライバーに話を聞いた。「今回思い通りのマシンではなかった」「まだまだこれから詰めていかないと上手く走れないかなという感じ」「今は外輪内輪の差に問題があって、上手くタイヤを使えていかない」と話す。切り込むところまでは接地感がありそうだが、そこから逆方向に切り替えた瞬間にグリップがない印象で、ドライバーが操舵で探っている様子が見られた。カートのキャリアがあるこのドライバー、コーナーの入り方でカートとの違いを感じているようで「カートはリアブレーキを使って、リアを流しながら向き変えをする」「この車(学生フォーミュラ)ではクイックに向きを変えることが出来ていない、ブレーキからの進入でヨーが足りない印象」「リアが残っている感じ」とのこと。三支部までにはこうした部分もアジャストしていくという。

他チームがマシンやセットに悩むコメントが返って来る中、第一声「雨楽しかった」と返してくれたのは日大理工のドライバー。「5,6年もののウェットタイヤを持ち込んだが、それよりも新しいドライ(スリックタイヤ)の方が雨の中でグリップがあって、新発見だった」「乾き始めてドライで出したが、雨がめちゃくちゃ降り始めてドライでそのままいったらグリップしちゃった(笑)」とのこと。マシンについては、これまでFRPをステアリングのグリップを作っていたが、グリップテープに変えて来たという。スウェードにゴムが貼ってある仕様のグローブとの相性は良好らしく、「全然滑らないのでいい」とドライバーとしては好感触。しかしステアリング自体には課題があるようで、「ステアリングが激重で、筋トレをずっと繰り返している感じ」「切り始め30度くらいが重く、後半の4周、5周はかなり厳しそう」「ウェットでも辛いのでドライになってグリップが増すともっと厳しいかも」と話す。三支部に向けてはウイングを搭載して効果確認をしておきたいとのこと。

今回のテストでは関東勢に上位の関西勢が加わったことでライバル同士の立ち位置が少しだけ見えてきた。やはり京工繊の速さは明確。見立て通り、工学院が上がってきてエンデュランス相当では京工繊の2秒程後ろに付けているような位置にきた。今回の結果だけを見れば、そこに少し遅れを取っている印象なのが千葉大。ただどのチームも『全弾装填』されていない状態、ここからの上がり代をそれぞれ持っているという予想。ここに他エリアのライバルが加わった時にどんな並びになるのか8月エコパでの合同テストを楽しみにしたい。