ニュータイヤで61秒台、関東ICV勢が速さを見せる【エコパ合同テスト】

8月4日から9日までの6日間、前半・後半に分かれて合同テストが行われている。場所は静岡県袋井市の小笠山運動公園、通称エコパである。前半3日間は関東勢、後半3日間は中部勢がそれぞれ参加するスケジュールだ。今回はその3日目、関東勢にとっての最終日となった。この日参加したのは、茂木合同テストでも速さを見せた工学院大学や、毎年安定した仕上がりを見せる日本自動車大学校(NATS)など。天候は一日を通して晴れ、6月のエコパと同様に路面温度は50℃以上になった。ただし午後になると、時折テントが飛ばされそうなほどの強風が吹き、暑さが和らぐ場面も見られた。テスト2日目にあたる前日には、工学院が夕方にNewタイヤを投入し、61.83秒というタイムを記録。このタイムは、昨年同時期のエコパテストで京都工芸繊維大学が出したタイムを上回っている。この日の上位勢は、前日までの仕上がりをもとに微調整を加えるチームが多く見られた。

この日、トップタイムを記録したのは日本自動車大学校(NATS)だ。例年通り軽快な動きを披露したNATSの2025年マシンは、他チームからの注目も高い。今年から国内上位勢に倣ってPOUを導入し、今回のテストではその調整に主眼を置いていたとのこと。ドライバーは「車の素性として、パワートレインも含めてトラクションサイドが得意なところにある、それを生かしつつPOUの美味しいところを探した感じ」「エコパの前にPOUを効かせるポイントとどれくらい効かせるかというテストをしてきた」「それをベースにエコパでは、ブレーキングからピッチングを伴う旋回姿勢を作る時のPOUの設定を確認した」「POUを効かせるとやはりリアが軽くなったため、ポイントを少し下げたところである程度上限が見えた」「そこからフロントのグリップが出てくる方向でセットを煮詰めたら好感触になった」「その状態でのNewタイヤの感触を見たくて今日の朝にNew入れてアタックした」と語る。このアタックで記録したベストタイムは61.85秒。この日のトップタイムであり、前日工学院が記録したベストからわずか0.02秒差だった。アタックの時間帯こそNATSが午前中、工学院が夕方と異なるが、いずれもNewタイヤによるタイムである。NATSのアタックは2周のオートクロスを想定したもので、走行後のタイヤ状態からもしっかりと発動していることがうかがえた。タイムそのものもさることながら、朝のオートクロスを想定したようなNATSのランプラン、さすがの一言である。

2番手は前日に好タイムを叩き出した工学院大学。前日の手応えが良かったためか、この日はやや落ち着いた雰囲気でスタート。朝からドライバーを交代しながらのチェック走行を重ねた後、昼過ぎにはテントに戻って姿を見せなくなった。夕方のアタックに備えての温存と見られる。というのも、3日間フルコースを走り続けると当然タイヤも減ってしまう。闇雲に周回を重ねれば、安定した評価は出来ず、セットが煮詰まった時にはNewが残っていなくてアタック出来ない、なんてことも。彼らがコースに戻ったのは16時頃。アタックの準備を整えて臨んだものの、シケインに入ったところでエンジンがストップし、そのまま走行を終了することとなった。最後はトラブルでマシンを止めることにはなったが、前回の茂木テストを終えてからセッティングを一から見直してきたというマシンの走りは好調だ。ドライバーは「今回のエコパに向けてはかなり準備をしてきた」「茂木を振り返るとやはりフロントが弱く、ダンパーの設定も正しいところにいなかった」「それに対して、ダンパーの設定を計算し直して、同時にバネも変更してきた」「そのバランスに合わせてPOUも調整した」「その状態でエコパに持ち込んで、準備してきたセットのアイテムを試したら良いところが見つけられた」「(前日に)Newを入れた時もびしっとタイムが出た感じ」「今日は昨日のアタックの時に気になったデフを調整して(セットが)固まったので、夕方アタックしようとしたけど(エンジントラブルで)ダメだった」と話す。実際、動きからも茂木との違いは明らかで、リアが押すような挙動が消え、曲がる方向に変わっていた。午前中のチェックランでは63.21秒を記録。最終的にはリアに若干の軽さが残るという感触もあったようで、次回のテストに向けて調整していくようだ。

3番手につけたのは日本大学理工学部。エンジントラブルで周回こそ限られたものの、存在感を示した。ドライバーは「エコパの前に学内でテスト走行をしたが、その時に大きな修正が入ってしまった」「その修正をしたところだったので、その状態(戻っているか)の確認から始まった」「走り出したがエンジンが不調になってほとんど走れず終わってしまった」と振り返る。午後にはタイヤをSENTURYからContinentalに変更。ドライバー、チームともに好印象を受けたようだ。「(Continentalのほうが)コールドの状態からグリップがあって、転舵した時もフロントが食っている感じがあった」「トラクションをかけた時にちゃんと後ろが蹴ってくれる、前に進んでくれる感じだった」「全体的にグリップに差はあったが、特に縦方向のグリップに差を感じた」と語った。

上位以外では、茨城大学が精力的に走行を重ねた。エンジン不調に見舞われる時間帯もあったが、即座に対応し、走行を継続。最後までコースに出続けた姿勢が印象的だった。ドライバーは「最初、POUの設置を変えると脱出でリアの粘りが無くなってしまった」「それに対してダンパーや内圧など試してみたが、改善するところまでいかなかった」「まだリアが軽い、舵が残った状態でアクセルを開けていくとリアが出てしまう」「これからウイングも付くと思うので、そこでバランスを確認したい」と述べた。

関東勢はこの後用意されているいくつかの合同テストに向けてさらにマシンを煮詰めていくことになるが、ここにきて関東ICVチームの仕上がりが加速してきた印象だ。この勢いのまま、強豪・関西勢を打ち破ることができるのか。大会本番での答え合わせが待ち遠しい。