タイムアップに苦戦する中部勢、関西・同志社の好調際立つ【エコパ合同テスト】

8月5日から4日間に渡り静岡県袋井市の小笠山運動公園(エコパ)で合同テストが開催された。改めて説明するまでもないが、エコパは昨年まで学生フォーミュラ日本大会が開催されていた会場。ここに昨年大会までのコースが用意されて、周回走行が行われた。今回訪問したテスト3日目には名古屋大学、名古屋工業大学、岐阜大学の中部勢に加えて関西勢から同志社大学が参加。午前中はチェックランを繰り返しながら各チームトラブル対応に追われていたが、一部のチームは午後には競技ペースで走れるようになり、コースにマシンを出していた。

この日最も好調にマシンを走らせていたのは意外にも関西から遠征してきた同志社大学。エコパテストに先立って行った泉大津テストでデフの設定を変えて大きなヒントを掴んだという。その成果か、ライバルがバランス取りに苦労をする中、旋回姿勢を作るところから脱出までがスムーズな印象だった。特にダブルヘアピン1個目の立ち上がりから2個目に入るところの繋ぎ区間で揺れ戻しのような動きを出さずに切り替えしていく。このあたり低速・低荷重のASE想定で作り込んで来た印象を受ける。「泉大津でデフの設定を変えたら頭の入りが良くなった」「それをベースにエコパに持ち込んだら、バランスが良くて、しっくり来た感じがしている」「頭の入りが良く、ちょうどいいオーバー具合で、リアで曲がって行けるマシンになっている」とかなりの好感触の様子。あまりの好調ぶりに『欲は出て来ないか?』と聞いてみると「欲は出てくるが見せないようにしている(笑)」「うちに秘めて淡々と(自分たちの目標とするところで)自分の仕事をしようと思う(笑)」という答えが返ってきた。終始明るいドライバーの表情が印象的だった。

ついに姿を現した名古屋大学のニューマシン、その凶暴なまでの走りで関係者を驚かせた。有り余るパワーとセット状態も相まって、コーナーの進入から脱出までスライドしながら抜けていく。もちろんドライバーはカウンターを当てるが、それによる速度の落ちを感じさせない。その姿には違和感を覚えるほどだ。「5月末にシェイクダウンをして、トラブルも結構出て悩まされたが定常でマシンを作り込んで来た」「その状態を泉大津とエコパで確認した」「泉大津のASE想定で走らせた状態、オーバーステア傾向でエコパには持ち込んだ」「エコパで走らせて見ると、速度が乗るコーナーだとオーバーシュートすることが多かったが、それ以外のところのフィーリングは良く、手応えとしても悪くない」とエースドライバーもポジティブなコメント。ただ運転は辛いようで「運転には結構手を焼いていて、5周でへとへとになる」「首も目も負担が大きい」とのこと。そんな名古屋大学だが、タイムはトップチームに一歩及ばず2秒の差を開けられる。「(京工繊に対して)2秒は結構大きいというのが率直なところ」「何か見つけないと勝てないな、というのが現状の印象」「自分たちの戦略的にはオートクロスまでの競技で貯金をためて、エンデュランスにのぞむことになる」「オートクロスでタイムを出さないといけない」「ショートランでのタイヤの発動などは京工繊の方がノウハウを持っている」「勝つには弾込めが必要だが込める弾を探してくるところから始めないといけない」と勢いのあるマシンとドライビングを見せた一方でライバルとのギャップに対して冷静な見方だ。またこの日は今年新調したバッテリーを始め、マシントラブルが続きコースに出ても止まってしまうことが多かった。速さとともに信頼性も課題になりそうだ。

7月19日に人とくるまのテクノロジー展の車両展示を訪問いた際には「200km以上を走っている」「マシンは乗りやすいところに来ている」と語ってくれた名古屋工業大学もエコパテストに参加。タイヤ、ドライバーを変えつつ精力的に周回を重ねていた。エースドライバーに話を聞く。「ASEのコーナーを切り取ったようなコースを作って過渡を評価してきた」「過渡が良いところに来たので定常の評価も行ってきた」と事前に聞いた通り順調にテストを消化してマシンを持ち込んだという。しかし事前のテストとは異なるフィーリングだったようで「エコパに持ってくるといつもよりもアンダーに感じた」「スラロームでの反応が遅い感じがした」「奥のセクションや右右のところでプッシュっぽい動きをしている」と語る。言葉の通り、トラクションをかけていくシチュエーションでは内側のフロントタイヤがリフトしているのが確認出来た。タイムは65秒台で名古屋大学、同志社大学に続く。「感触としてはもっと行けたになあという感じ」「64秒台が出て納得出来るところかと思っていたが足りなかった」「一緒に走ってみて同志社、関西勢の勢いを実感している」「負けないようにしっかりタイム出していきたい」と話す。この日苦戦した様子の名工大チーム、ある情報では夜にOBが参加してリモートでの緊急ミーティングを開催されたとか。その成果が出るか、躍進に期待したい。

事前の予想に反して絶不調を見せたのは岐阜大学。65秒台で名古屋工業大学に続くタイムで終えている。この日、ほとんどの走行を担当したエースドライバーは「持ち込みの状態が予想以上に良くなかった」「スロットルに難があって非常に乗り辛い状態だった」「本当はセッティングをするつもりで来たが、午前中の時間の多くをトラブルシューティングに使ってしまった」と話す。午前中はコースにマシンを出して、またコースに戻ってくるまでが長く、競技ペースまで上げられない時間も続いた印象だ。ようやく午後からセットを変えて評価をし始めるが思いの外タイムが上がって来ない。「持ち込み状態ではフロントが食わない状態だった」「セッティングをトライして改善はして来ているが、ボトムの待ち時間が長く、ドライバー的にはもうちょっと早く曲がって欲しいなという感じ」「シケインの1個目のタイミングが難しくて、そこでもタイムを落としていると思う」「ブレーキングからステアインする美味しいところが狭い感じ」というコメント。外から見てもわかるレベルで低荷重コーナーのボトムスピードが遅く、待ち時間も長い。「ASEになって、よりRの小さいコーナーが増える」「現状のマシンでは低速・低荷重のコーナーの待ちが長く正直嬉しくない状況」「セットを変えて改善はしてきている、ここ(低速・低荷重)の改善に的を絞って続けていきたい」と話すドライバーの表情は険しい。

4日間のテスト、前半の2日間では関東勢と関西勢から京都工芸繊維大学がテストを実施。して62秒台、63秒台を出した一方でこの日は64秒台がトップタイム。路面の影響もあったかもしれないが、少しライバルに遅れを取る結果となってしまった中部勢。有力チームも多いだけにここからの追い上げに期待したい。