学生フォーミュラ2026 もてぎ合同テスト|工学院大学が首位タイム、各チーム大会に向けた仕上げ作業を開始
Text : 蛙田 三也(Sanya Kaeruda)
Photo : 堀田 拓哉(Takuya Hotta)
6月20日、21日の両日、栃木県・モビリティリゾートもてぎ南コースで関東勢による合同テストが開催され、その初日を迎えた。事前エントリーには東北や新潟など遠方のチームを含む27チームが名を連ねた。当日までにマシンが完成せず参加を見送ったチームもあったようだが、全体としては盛況なテストとなった。今回のテストは、1日目を関東支部、2日目をホンダが主催する形となったが、初日からホンダのスタッフやマイスターズクラブのメンバーが車検やブレーキチェックを担当し、ホンダの手厚い支援を感じさせるスタートとなった。


前日まで雨予報だった初日。現地は曇り空で、気温、路面温度ともに低いコンディションとなった。結果的には15時30分ごろから雨粒が落ち始め、走行終了時には路面に水たまりができるほどの降雨となったものの、多くのチームはドライコンディションでテストメニューを消化することができたようだ。
本番仕様を投入 旋回性能向上に確かな手応え
「本当はウェットセットを合わせるつもりで来たんですけどね、どうしましょうかね(笑)」と、想定外のコンディションに冗談交じりで困った表情を見せたのは千葉大学のドライバーだ。5月の日本自動車研究所城里テストセンター(JARI)でのテストでは未装着だったリアウイングやサイドカウルも装備し、ほぼ本番仕様の状態でマシンを持ち込んだ。朝の段取りから走り出しまで非常にスムーズで、この日の最初にコースイン。そのチェックランから完成度の高さが伝わり、外から見ても扱いやすさを感じさせる挙動を見せていた。特に低速コーナーではフロントの入りにストレスがなく、旋回中もフロントタイヤへ過度な負担をかけている印象がない。「JARIの時はアンダーが強くて、その時に持っていた調整代ではどうしようもないくらいだった」「ここに来るにあたって、フロントのARBに手を入れて持ち込んだ」「去年も小さいコーナーでの旋回性能を念頭に準備をしていたが、今年はその流れを維持しつつより曲がる方向にできていると思う」と手応えを語った。ベストタイムは比較的早い時間帯に記録した68.1秒で、後述する工学院大学に1.5秒届かない2番手タイムとなった。これに対し、「最後、工学院さんにやらてしまった、速かった」「ただタイヤ(マイレージ)もわからないし、残りのアイテム的には同じようなところ(タイム)が見える」「仮に周回の速さで負けても、アクセラでのアドバンテージがあるためそこまで心配はしていない」と、大会本番を見据えたコメントを残した。


66.5秒でトップタイム、大会へ向け順調な仕上がり
その千葉大学を抑え、今回もトップタイムで初日を終えたのが工学院大学だ。ただし、朝一番のコースイン直後に電装トラブルが発生し、少しバタバタするスタートとなった。ドライバーは、「本来は、ドライバー選考をしたかったが、電装系のトラブルが出てしまった」「(ドライバー選考を)イコールコンディションでやりたかったので、メニューを変えてチェックをした」「このテストの前に、アッカーマンを変えていて、その後、セットを煮詰めていなかったのでリアのARBなど調整して効果を確認した」「5月のJARIの時に、奥のスプーンのあとや、右右のところ、舵角が小さいコーナーでリアが軽い症状があって、それに合わせてRの大きなスキッドパッドを走ってアッカーマンを調整してきた」と話す。コメントのとおり、JARIではターンイン時にリア内輪の接地が薄いように見えていたため、その対策としての変更と考えられる。また、今回のテストから本番仕様のエキゾーストを投入。「これまでよりも中低速域でのアクセルのツキが良くなる方向にした」「コースでいうと、Mコーナーみたいなところで効くようにしている」と明かした。安定した速さを見せる工学院大学だが、仕上がりはまだ75〜80%程度とのこと。トップ争いが予想される関西勢の動向は気になるものの、自分たちの準備を着実に進めたいと締めくくった。この日のベストタイムは66.5秒。路面コンディションが悪化した終盤に記録したタイムだけに、ライバル勢にとっても気になる一撃となった。


パワトレ制御の熟成、ドライバビリティ改善が課題
この日、3番手タイムを記録したのは茨城大学だ。走り出しこそ千葉大学、工学院大学より遅れたものの、1日を通して着実に周回を重ねていた。一方で、コース上ではリアが急激に滑りスピンモードへ入る場面が比較的多く見られた。この点についてドライバーは、「今年のパワトレから、マップ制御に変えていて、スラロームなどでアクセルの開け始めに待ちがあった」「そこから開けていくと急に吹けることがあり、リアが出るシーンにつながった」「コーナーひとつずつで、そういった待ちの時間やいきすぎることがあってタイムロスしている」と説明した。この日は、この制御部分の調整に多くの時間を費やしたという。シャシーは昨年の仕様を踏襲しており、「昨年の仕上がりがよく、手応えもあった」「その流れを維持している」「そんな中でも対地キャンバーを見直して、キャンバーゲインを調整した」と語った。2日目に向けては、「天候はまだわからないが、雨をほとんど走ったことがないので、まずはウェットセットが煮詰めようと思う」とコメント。ベストタイムは70.7秒だったが、パワートレインのドライバビリティが改善すれば、さらなるタイムアップが期待できるポテンシャルを感じさせた。


この3チーム以外にも、今年から10インチタイヤへの大きな仕様変更に踏み切った日本大学生産工学部や、例年以上の周回数を重ね精力的に速さを積み上げている東京都市大学など、勢いを感じさせるチームも多くいた。2日目のタイミングシートがどのように変化するのか、大いに注目したい。
1988年生まれ。大学在学中に学生フォーミュラに参加し、卒業後は自動車業界を経験。現在はモータースポーツを主軸とする技術ジャーナリストとして活動する。学生フォーミュラを起点に、競技車両の設計思想や製造の現場、競技を支えるエンジニアの思考を取材・執筆。技術と競技のあいだにある「それを作る人たちの思考」に関心を持ち、現在は国内外のレース車両開発や人へと取材領域を広げている。

