熱く摩耗に厳しい路面、緩急つけたランプランで上手に走らせる【関西合同テスト】

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7月26日・27日に大阪・泉大津で開催された合同テスト(ユーズドタイヤとニュータイヤ、上手に使えるチームはどこだ【関西合同テスト】 -学生フォーミュラ 学生フォーミュラのコラムサイト|KAERU JOURNAL)の2日目、前日から引き続き関西勢に加えて名古屋工業大学、九州工業大学が参加した。天候は晴れ。朝は暑さを感じる時間帯もあったが、風が吹く時間も多く、日差しが陰ることもあり、前日と比べると過ごしやすい中でのテストとなった。上位チームでは、時間帯ごとの路面の変化を捉えたランプランが目を引いた。朝夕の路面温度が低い時間に状態の良いタイヤを投入し、路面温度が高い時間帯は周回コースの走行回数を控え、スキッドパッドやアクセラレーションへ移行するチームが多く見られた。

朝と夕方に程度の良いタイヤでアタックを行ったのが名古屋工業大学。前日は摩耗の進んだタイヤでの走行を重ねたことで、持ち込みセットの評価が進まずタイムも伸び悩んでいたが、この日は路面温度が上がり始めたタイミングでNewタイヤを投入。70秒台を記録し速さを確認しつつ、前日からのマシンバランスもチェックした。その後はUsedタイヤに戻して周回を重ね、夕方、ラバーの乗った温度の低い路面で再度アタック。ここで69秒台という速さを見せた。エンジニアは「昨日はタイヤが全然ダメだった」「その中でも得られたものを夜に整理して、今日のセットに盛り込んだ」「午前中(のアタック)は予想していた通りアンダーステア方向にいった」「午後に向けては、ARBとレーキで調整したがARBだとリアの限界が下がる方向にいったためレーキで調整した」「タイヤが良くなった分、リアが落ち着いたためダンパーを微調整してアタックをしたら良い状態になった」と語った。また、路面温度についても「最後(アタックした時)は路面温度が本当に丁度良かった」「本番に向けて、そこ(タイヤに適した路面温度)を知れたのは大きかった」と手応えを感じている様子だった。前日の不調を払拭し、Newタイヤでのバランスと速さを確認した名工は、69.5秒で文句なしのトップタイムを記録し、大会に向けて調子を上げてきた。

前日夕方、16時前にNewタイヤを投入して3番手タイムを記録した九州工業大学、この日も快調な走りを見せた。朝は前日に使用したNewタイヤから程度の悪いUsedタイヤに戻しており、夕方のアタックに備えてタイヤを温存していたと見られる。ただし、泉大津の攻撃性の高い路面では摩耗したタイヤではタイムが出にくく、運転も難しい。そのため、アタックまではドライバーの走行距離を稼ぐ方向に切り替えたようだ。フロントタイヤは早々に構造が浮き出るほど摩耗が進んでおり、厳しい状況で路面温度の低下を待っていた。そして夕方、前日と同じようにタイヤを投入してアタック。名工とほぼ同タイミングでベストタイムを記録し、70秒台に入れてきた。ドライバーは「昨日の最後と今日は少しマシンの印象が違っていて、調整が必要だった」「昨日よりもリアが重く感じられため、内圧を調整して応答を上げる方向にした」「それでも昨日の方がフロントが強かった」「最初にNewを入れた時と、今日Newを入れた時とで運転も変わったので運転がまとまってからNewを入れても良かったのかなと思う」と話した。前日にNewタイヤを投入した際に比較的多く走行していた九工大は、そこでのフロントの摩耗が影響したか、ベストなバランスでアタックできなかった様子だった。今年初めて泉大津を走る九工大にとって、2日間でマシンや運転をアジャストするのは難しい課題だったはずだが、ランプランの組み立ては見事で、タイムも70.7秒を記録した。関西の強豪勢を抑えての2番手タイムで、大会に向けてこれまで以上に注目されるチームになった。

一方で、この週末にNewタイヤを投入しなかった大阪大学は、程度の良いUsedタイヤでの走行を重ねた。前日にベースセットを確認できたことから、この日は周回コースよりもアクセラレーションに多くの時間を割いていた。エンジンの適合や異なるギア比のテストを行っていたようだ。「今日は少しトラブルもあって、アクセラを重点的にやった」「アクセラに関しては目標とするところまでぐっと上がれた」「周回コースはほとんど変えずに走った」「1個試したものはあったが、昨日の方が感触は良くてその点は考え直そうと思う」「バランスとしては、どちらにも振れるようなところにいる」「ただ最後走った路面に対してはアンダー方向に振る舞ったため、大会を想定して内圧等見直す必要がありそう」とのこと。積極的なセット変更やアタックは見られなかったものの、ベースセットが決まってきたことの表れとも言える。タイムは72.0秒でこの日の4番手。先月時点では不安視されていた阪大だが、その強さを改めて示した。

この日3番手となったのは京都工芸繊維大学。阪大同様に午前中はアクセラレーションに多くの時間を費やし、11時を過ぎてからようやく周回コースへと移行した。途中、セット変更を繰り返しながら走行を続けていたが、昼を過ぎたところでトラブルが発生。電装系の不具合によりマシンを止め、走行を終えることとなった。エンジニアは「バネレートを前後ばんっと下げてみたらグリップが上がってそうだった」「内圧もライバルの設定値を聞きながら少し下げたところで試して、同時にキャンバーも見直した」「そこからセットを煮詰めていこうというタイミングでトラブルが出てしまった」と語った。確認できた中では、トラブル発生前に記録した71.6秒がベスト。通常なら即座に復旧させてくる京工繊が走行を中止したあたりに、今回のトラブルの深刻さが伺えた。

この週末、Newタイヤを投入した1番手・2番手と、Newを使わなかった3番手・4番手には1秒以上の差がついた。この差は、Newタイヤを使用した側から見れば「足りない」。Newタイヤのタイムゲインは少なくとも1.5〜2秒、泉大津の路面ではそれ以上の可能性もある。それを考えると、今回の結果では名工が京工繊に、九工大が阪大に逆転されていてもおかしくない位置関係にある。各チームの実力はかなり接近しており、今後の展開は混戦が予想される。おそらく大会までに彼らが揃って走る機会はもうない。それぞれが今回の結果を踏まえ、ライバルの上がり代や実力を想定しながら、残された時間でさらにタイムアップを図っていくことになる。上位勢、大会に向けて緊張感が一層高まってきた印象だ。