レースエンジニアが見た学生フォーミュラ【NAKAJIMA RACING】
8月8日~11日の4日間で開催されているエコパ合同テスト、各日程8~9チームに分けて走行が、走行の前日後日いずれかで模擬車検が行われている。初日には学生フォーミュラOPでSUPER FORMULAやSUPER GTに参戦するNAKAJIMA RACINGのレースエンジニアがテストを視察。気になるチーム、マシンについて、ポジティブ、ネガティブ両面からコメントを頂いた。
【加藤祐樹トラックエンジニア】
「オーソドックスに見えながらも良く練られてベストを追求」
京都工芸繊維大学の車両が綺麗に整備されていました。空力処理に関して、繊細な設計を行っているように感じました。またダンパーレイアウトもオーソドックスに見えながらも良く練られてベストを追求できているように見受けます。基本的な事が突き詰められてこそ、詳細な車両セッティングや構成部品の作り込みに繋がると思いますので、それが出来ているマシンの一つだなと感じます。ピットに丈夫で平滑なシートを敷いているのも好印象です。
「欲しいと思われる設計の観点を」
他の強豪校も含めてですが、走る事にウェイトが重く、魅力的な商品としてのクルマ作りが全体に少ないと思います。パッケージレイアウトや機能性を持った新しい構成、デバイスなどお客様目線に立って、欲しいと思われる設計の観点を探しましたがあまり多く見られないかなと。自動車は機能が不可欠であるのに加えて、極端に言えば芸術品という側面もあると思います。そういった商品としての側面も競技として評価されるのが学生フォーミュラ大会だと思いますので、どういうクルマを作りたいのか、是非深く議論してクルマ作りをしてほしいです。まさしく、一般乗用車の開発と同じではないでしょうか。
全体を通してダンパーの話をさせて頂くと、過去のキャリーオーバーという話をとても多く聞きました。コロナウイルスによる空白や困難から来ている事と思いますので、そこは是非細かく拘って、自分達の考えによるセットアップをどんどん試してほしいと思います。車両セットアップは皆さんが思っている以上に大きな感度があります。
「ピットエリアの整理整頓が・・・」
私も2010年大会にチームを創設して参戦した経験がありますが、困難を承知で奇抜なアイデアを採用したため、大会ではまともに走行できない内容でした。今回、お話を聞いて走っている姿を見て、このタイミングで走らせてPDCAを繰り返す作業が出来ている全校に言える事なのですが、ピットエリアの整理整頓が行き届いていませんでした。メンバーそれぞれの居場所もはっきりしていないように感じられました。
このような環境ですと、モノを探したり、動線が交錯したりと余計な頭や時間を使ってしまう事になるので、是非とも5Sを守り、またそれが出来る機材(机や機材箱)の準備も拘ってほしいと思います。地ベタで作業する様子も多々見られましたが、それも良くないですね。