学生フォーミュラ日本大会2026|難コンディションのオートクロス、北海道大学と同志社大学だけが64秒台

 Text : 蛙田 三也(Sanya Kaeruda)
Photo : 原島 由樹(Yuki Harashima),堀田 拓哉(Takuya Hotta)

 8月2日から6日間の日程で開催されている学生フォーミュラ日本大会2026は大会4日目を迎え、いよいよ動的審査が始まった。Aichi Sky Expoで開催された過去2大会は、大会期間中も天気予報を気にしながら競技が進むような空模様だったが、今年はその心配はなく、快晴の下で競技が進行している。当初は灼熱の大会になることも予想されたが、実際には気温は比較的落ち着いており、走行コンディションは良好だった。また、この日の競技は大会初日に発生したトラブルの影響により、EVクラスの出走はなく、ICVクラスのみで実施された。トラブルについては、大会側(自動車技術会名義)から発表された内容を参照いただきたい。(リンク:第24回 学生フォーミュラ日本2026におけるEV車両火災と競技再開について

 今年は競技フォーマットが、過去にも採用されていた午前にスキッドパッドとアクセラレーション、午後にオートクロスを行う形式へ変更された。冒頭で触れたように好コンディションの中で始まったスキッドパッドとアクセラレーションでは、ともに日本大会記録が更新された。スキッドパッドは同志社大学、アクセラレーションは九州工業大学が新記録を樹立している。この流れを受け、オートクロスもハイレベルなタイム争いになると思われた。しかし、走行が始まるとその予想は大きく覆される。「全然グリップしない」「前後どっちも滑る」と、多くのチームが路面に苦しみ、不発に終わった。その中で別格の走りを見せたのが北海道大学と同志社大学だった。この2チームに共通していたのは、2名のドライバーをフルに活用し、速さを引き出した点である。

 比較的早いタイミングで1人目を送り出した北海道大学。タイムは67秒台と、その時点では上位には届かなかったものの、マシンの完成度の高さを感じさせる走りを見せた。そのフィードバックをもとにセットアップを煮詰め、本命のエースドライバーがコースインしたのは18時半。路面温度はピークを過ぎ、日も傾いて薄暗くなり始めた時間帯だった。アタックには少し遅すぎるようにも思えたが、結果は違った。北大のエースが叩き出したのは64.8秒。それまでのトップタイムを0.2秒更新した。ドライバーは、「先に走ったドライバーのコメントを聞いたり、YouTubeを見たりして、ブレーキバランスと内圧を調整した」「いつもより下げる方向で出したが、ただ出走が遅くなって、路面温度も下がってきて、(出走を待つ中で)また(タイヤに空気を)入れたりもした」「結果的に、テストで走った時の路面温度になったので、その時の状態に戻してアタックした」「(ライバルたちが言っていた)路面のコンディションが悪いというところは、走り出して最初のコーナーでわかったので、走り方を少し変えて、大きくラインを取るように走った」とコメントした。マシンの動きを見ても、確かに滑りながら進入していたが、ライバル勢のように一気にグリップを失うのではなく、滑り出しても前へ転がる挙動を維持していた。このあたりにも、昨年同様の高いマシン完成度が表れていた。

 今年も北大が制するか――そう思われた直後、ドラマが待っていた。同志社大学である。スキッドパッドで日本記録を樹立し、オートクロスでも本命視されていた同志社大学だったが、1人目のアタックは不発に終わる。他チームと同様に路面へ翻弄され、リアタイヤはまったくと言っていいほどグリップせず、初期のバイト感もなく突然滑り出していた。これを受け、同志社は『路面ができていない』と判断し、2人目の出走を遅らせる作戦へ切り替える。路面温度が下がるデメリットよりも、各チームの走行によって路面が掃かれ、コンディションが改善するメリットを優先したのである。いわゆるトラックエボリューションに賭けたのだ。そして、この賭けは見事に的中する。ヘルメットのシールドをミラーからクリアへ交換するほど暗くなった時間帯まで待って出走した。1周目はやはりタイムが伸びず66秒台。それでも今振り返れば、この時点で勝負は始まっていた。迎えた2周目。依然として滑りやすい路面ではあったが、それを抑え込みながら1周をまとめ上げる。タイムは64.4秒。北大の記録を0.35秒更新する驚異的なタイムだった。ドライバーは、「1人目、いつも通りのセットでいったら、サラサラでグリップしなかった」「それを聞いて、内圧をがっつり下げて、1周目にしっかり温めるように走った」「バンプで踏み切らずに、アクセルを戻して処理しつつ、1周でまとめられる走り方をした」「テストではJARIや泉大津やいろんな路面を走ってきて、その時々にアタックと振り返りをしてきた」「そのおかげもあって、今日の路面に対応できたと思う」「(オートクロス1位に対して)感無量、まだ現実味がないくらい」「10年前から受け継ぎならやってきた、ここに到達できたことに感謝したい」と語った。

 結果だけを見れば、この日のオートクロスは「待つこと」が正解だった。つまり、トラックエボリューションをいかに味方につけるかが勝敗を分けたのである。それに気づき、実際に対応するには、北海道大学や同志社大学のように2名のドライバーを揃え、確かなバックデータに裏付けられたセットアップの振り幅を持ち、それを実行に移す度胸が必要だった。速さを争うために必要な要素をすべて積み重ねていたからこそ、この2チームだけが64秒台へ到達したのである。