タイム抹消の厳しい現実、魅せた速さは幻に【学生フォーミュラ日本大会2023】
Photo by @125ascot (X)
昨年大会ではシェイクダウン直後のマシンを持ち込んで、車検に苦しんだ大阪大学。今年は昨年よりも早くにシェイクダウンを済ませ準備を進めていた様子。「(テストでは)燃料系トラブルで走行できない場面が多く、ブレーキが効かないことにより現地でエア抜きをする場面も多かった」「しっかりと走れたのは三支部(8月のエコパテスト)が初であり、エラー出しや、セッティングを考える時間が少なかった」と、マシントラブルにより走行機会を逃したこともあったようだが、8月のエコパテストでは速さを見せ、大会でも上位に入ることが期待された。「(今年のマシンは)高速中速での安定感がすごく、踏んで曲がれるマシンだった」「今年度から慣れないセッティング出しを頑張ってくれたサス班リーダーと、的確なフィードバックや意見をくれたセカンドドライバーに感謝している」と話すのは大阪大学のエースドライバー。
大会に持ち込んでから、騒音テストまではスムーズにクリア出来た阪大チームだったが、騒音テストから流れは悪い方向へと変わっていく。「去年苦労した低回転側での騒音は余裕でクリアできたが、昨年余裕だった高回転側がダメだった」「いろいろ対策を練ったがあまり効果がなく、車検2日目にもつれ込んでしまった」という。全く騒音の測定値に変化が見られない状況が続き、チームとしても緊張感が増していった。結果として大会4日目の正午前にはクリア。「パワトレリーダー並びに22年度パワトレ班の方々の努力が実り、正午前に排気をクリアすることができた」「この排気の対策が一番苦労した」と話す。
動的の午後セッションに間に合わせたものの、騒音テストに時間を要したことでチームはオートクロスに向けたプラン変更を余儀なくされる。「(当初オートクロスは)午前にセカンドドライバーが、午後にエースドライバーが全開アタックする予定だった」「車検が4日目にもつれ込んだため、午後の部でアクセラスキッパが終わり、時間に余裕があればプラクティスを優先、その後エースドライバーがアタック、時間が余ればセカンドドライバーがアタックという予定に変更した」とのこと。
そしてこのプラン変更をして臨んだオートクロス、阪大チームにまさかの事態が起こる。「1周目が終わり、2周目待ちゾーンに入ったところで、フロントウイングが擦っており整備不良により走行できないことが言い渡された」「その後ゼロポス(コース管制ポスト)でタイム抹消と車検落ちを通告された」一般的なサーキットでのモータースポーツでは最低地上高が設定されていることはあっても、路面干渉を禁止しているカテゴリーはあまり聞かない。しかし学生フォーミュラで路面干渉はご法度、レギュレーションで禁止されているのだ。厳しいが、レギュレーションで決まっている以上チームはロードクリアランスを確保した上で速さを作る必要がある。
タイム抹消というイレギュラーを受けてチームは少し慌ててしまう。「(タイム抹消された後)とりあえずピットに急いで向かい、車検をするためにウイングを外すか、擦ったことを確認してもらうためにそのままにしておくか、タイム抹消なのかレギュ違反なのかどうなのかなど判断に迷いがあり、少し無駄な時間を過ごしてしまった」「その後再車検を受け、セカンドドライバーが2回目出走として並んだが、時間が来てしまい、エンデュランス出走のチャンスを逃してしまった」「通告後すぐにでも再車検を受け、セカンドドライバーがタイムを残しに行けばエンデュランス出走も可能であったが、急いで再トライするという正しい判断をすぐに下すことができなかった」とのこと。
ちなみに大阪大学のエースドライバーが1周目にマークした58.742秒はオートクロス上位6チームと比べても遜色ない速さ。「エアロを載せた状態での走行はオートクロスがほぼ初めて、バランスが崩れることを恐れたため、エアロ無し状態のセッティングのままでいった」「恐る恐るスタートしたが、1コーナーでエアロのポテンシャルに正直驚かされた」「高速域での効きがいいのはもちろんではあるが、中低速でも去年に比べかなり効いているような感触があった」「ただ高速中速コーナーでインリフトしかけてリアのグリップが損なわれることが時々あった」「タイヤは、1周目は熱が入っていないためかまだ粘り気が出ておらず、2周目で完璧に近い状態に持っていけるぐらいの感触だった」「(オレンジボール提示が無く)2周目のアタックができていれば1秒以上は余裕で縮まったのではないかと思っている」と話す通り、2周目アタック出来ていれば57秒台が見えていたかもしれず、ファイナル6に入る可能性も十分にあった。車検まで話を戻すと、順調に騒音テストをクリアしていれば当初のプラン通り午前セッションにセカンドドライバーでアタックが出来ていたはずだ。仮にこのタイミングで路面干渉が発覚しても午後セッションまでに対応してオートクロス上位獲得、エンデュランス出走が出来ていたのでは、という考えも過る。改めて上位に行くには大会中に一瞬の足踏みも許されないのだと、思い知らされた。
速さはあるものの2年連続で動的完走が叶わなかった大阪大学、来年に向けては動的完走を絶対条件に据えて計画を立てたという。「再製作を大幅に減らし爆速で車両を作り上げ、走行回数を増やすことでタイムを稼ごうという方向にシフトしたスケジュールを組んだ」「去年今年のOFRACのマシンは、多くのアップデートを行うことで設計したモデルの時点である程度のポテンシャルが期待されていたが、来年は走行回数を稼ぎセッティングを煮詰めることで、タイムを縮めていく方向性でプロジェクトを進めていこうと思う」「Final6は狙っていく」と、何としても結果が欲しい大阪大学は2024年大会に向けて大きく舵を切っていくようだ。
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