問題が起こっても”いつも通り”の結果を出せるチーム力、安定感。【学生フォーミュラ日本大会2023】

朝からすでに日差しが強く、厳しいコンディションとなった大会5日目のエンデュンラス。前日のオートクロスで62秒台を出した茨城大学からのスタートとなった。マシンは「オートクロスで低速脱出のプッシュが出やすい状況だったため、ダンパーセットを若干変更して送り出した」「また内圧もコンディションに合わせて10%ほど下げてのぞんだ」「燃費的には心配無く、なおかつ冷却に不安があったため(燃料を)吹いて冷やす方向にも使った」とのこと。ただそれでも冷却は厳しかったようで、「エンデュランス後方は100℃以上になってしまったため、19周目以降はクーリングして走らせてしまったのが悔しい」と話す。今シーズンは主要メンバーの事情もあり、スケジュールに遅れが生じてしまって、大会に向けては目標が『完走』に変わったという茨城大学。狙っているマシンのポテンシャルを出し切れていないようで、完走しながらも悔しさを滲ませたのが印象的だった。

茨城大学と同じタイミングでエンデュランスに出走したのはホンダテクニカルカレッジ関東。「確実に走り切れるようにマシンを仕立てた」「オートクロス終わってからトルクチェックや漏れの確認等マシンのチェックをして準備をした」とのこと。茂木テスト等走行を重ねて順調にセットアップをしてきたチームに思われたが、意外にもNewタイヤを入れたのは大会が初めてだったらしく「新品タイヤを入れたのは大会が初めてで、タイヤのマネジメントが出来ていなかった」「内圧が決めきれていなくて、どこらへんで熱ダレが出るのかもわかっていないままだった」と話す。実際に走行後のタイヤ、特に右リアには深いささくれが見られ、熱ダレしたタイヤを滑らせた結果出来たものと想像する。またエンデュランスに向けては燃費に不安があったようで「燃料が足りるか、というところは心配していた」「昨年のエンデュランスで横Gがかかったところで吸わなくなる症状があった」「また直前のエコパテストで燃料消費が多かったため懸念していた」とのこと。さらにこの暑いコンディションでは朝一番の出走でも冷却に気を使う必要があったという。「昨年冷却が足りていなくて、準備をしてきた」「それでも8月のエコパテストでは100℃を超えてきたため、(エンデュンラスでは)マネジメントして走って80℃をキープしていた」とのこと。心配する箇所がいくつかあって、年間スケジュールも遅れが生じていたようだが、今年はMotecを導入するなど確実にステップアップしてきたホンダテクニカルカレッジ関東。来年以降更なる進化を期待したい。

オートクロスで64秒台を出した山口東京理科大学はライバルの出走が遅れたことで1つ繰り上がって5番目の出走、昨年と同等のタイムを出して安定感を見せてきた。しかし今シーズンのチームはかなり苦労があったよう。「走行会とかも全然出来てなくて、セッティングも詰められていなかった」「予定がめちゃくちゃ遅れて、ぎりぎり大会に持ってこられた」とのこと。エンデュランスの動きを見ると昨年に比べて巻き込む動きが少ないように見えたが、ジオメトリー等は変えておらずドライバー側をアジャストしてきたとのこと。「昨年は比較的荒い運転だったが、まっすぐで止めて柔らかい舵角で曲がるようにアジャストしたことで、安定して走ることができた」という。マシンは上述の通り準備不足で懸念点もあったようで「吸排気を変えたことでアクセルレスポンスの悪さがあったが、パワーバンドを取れるギア選びや、フロントをねじ込むように曲げると去年と同じような動きを出すことが出来た」「オートクロスを走ったところ、燃料消費が思ったよりも多かったので、ギアを1個上で走るなどした」とドライバー側で工夫をしながらの走行となったようだ。それでもマシンのポテンシャルは十分感じられた様子。昨年も安定して完走させてきたこの3チーム、各々事情があって、苦労があったが今年も変わらずエンデュランス完走をしてみせた。