学生フォーミュラ日本大会2026|もっと速く走れた、やりきれない名古屋大学のトップタイム
Text : 蛙田 三也(Sanya Kaeruda)
Photo : 原島 由樹(Yuki Harashima),堀田 拓哉(Takuya Hotta)
8月7日、学生フォーミュラ日本大会2026最終日は、リスケジュールによりエンデュランスがキャンセルとなり、EVクラスのスキッドパッド、アクセラレーション、オートクロスが午前中にまとめて行われた。ここまでの大会期間中と比べると雲が多い空模様となったが、最終日もドライコンディションでの走行となった。
アクセラレーションは、大本命の名古屋大学が先頭に並び、周囲をざわつかせながらのスタート。静かに位置についた名古屋大学は、スタートの合図とともに飛び出し、高いギア音を響かせたと思った次の瞬間にはゴールへ。自身が持つ2023年の記録3.649秒を0.074秒上回る、3.575秒をマークする圧巻の走りを見せた。
スキッドパッドは静岡大学からスタートし、台湾大学、名古屋工業大学と進んでいく。名古屋工業大学が9.816秒を記録し、まずはこのタイムがベンチマークとなる。その後、名工大と同じヤマハ製ユニットを搭載する富山大学が出走。同様に9.890秒をマークし、好調な走りを見せた。スキッドパッド開始から40分が経とうかというところで名古屋大学が登場。ドライバーの手がやや忙しく動き、マシンの挙動に反応しながらも、出したタイムは9.556秒。前日に同志社大学が記録した日本記録を、さらに更新してみせた。
スキッドパッド、アクセラレーションの両方で記録を更新した名古屋大学。そのタイムに期待が集まる中、オートクロスが始まった。ここでも名古屋大学はエースドライバーを乗せて先頭でスタート。これまでの名古屋大学のマシンは、リアがナーバスだったような印象だが、この日は比較的リアがどっしりと落ち着き、全体的にスタビリティが高そうに見えた。1周目のタイムは65秒台。昨年のベストタイムが63秒台だったことを考えると、少し丁寧に入ったような印象だ。ここから63秒台に届くかと見ていたが、2周目のタイムはまさかの72秒台。運転にミスはなかったように見え、マシン側の問題と思われる。アクセラレーション、スキッドパッドのタイムを見れば、マシンとしてはかなり調子の良い状態にあったことは間違いない。それだけに、オートクロス中のマシントラブルは辛い。結果的にオートクロス1位を獲得するタイムだったが、悔しさをにじませるドライバーはピットへ戻り、静かにその場を去っていった。



同じ名古屋のEV勢として、常にバチバチと火花を散らす名古屋工業大学だが、こちらも少し雲行きが怪しくなっていた。スキッドパッドでは9.816秒と、名古屋大学には届かないまでも良いタイムを出していたものの、マシンの状態としては、あまりグリップ感を得られていないような印象だった。スキッドパッド走行中も、長くスキール音が聞こえていた。そこから調整を施して臨んだオートクロス。1周目は68秒台後半を記録すると、2周目は64.994秒までタイムを伸ばす。しかし、63秒台を狙っていた彼らにとっては“不発”。さらに2周目にパイロンタッチがあり、持ちタイムは68秒台。昨年オートクロス1位のチームは、3番手に落ちてしまった。ドライバーは、「テスト時の路面と違うのはわかっていたが、セットを外してしまった」「ブレーキ使わないと曲がらない状態で、低速コーナーで舵を入れて待たないと曲がらなかった」と落胆の表情を見せた。



一方、快走を見せたのが東京大学だ。チームメンバーで、SUPER GTにも参戦する新原選手がステアリングを握り、アタックに向かう。ここに来るまでに1、2回乗った程度だという。「アスファルトとしては尖っている方ではなく、路面とタイヤの関係もあってグリップ感は薄かった」「1周目は車の確認の時間にあてて、1周目の前半は限界をさぐって、後半でアジャストして、2周目でまとめるという組み立てで走った」「(普段やっているレースとの違いについて)学生フォーミュラは、同年代の仲間と一緒にマシンを走らせるところが楽しい」「自分はEVの修理やメンテはできないけど、その分走りでチームに貢献して、今回役目を果たせてよかった」とコメント。ベストタイムは65.949秒。ライバルのミスもあり、結果は堂々の2番手に入った。



上位勢では、東大がしっかりとパフォーマンスを発揮して走った一方、名大、名工の名古屋勢は不発に終わった。ICVクラスで繰り広げられた白熱したタイム合戦とは対照的な展開となったEVクラスのオートクロスだった。上位以外のチームもしっかりと実力をつけてきた印象が強い、今年のEVクラス。来年は、より接戦のタイム合戦が見られることに期待したい。
1988年生まれ。大学在学中に学生フォーミュラに参加し、卒業後は自動車業界を経験。現在はモータースポーツを主軸とする技術ジャーナリストとして活動する。学生フォーミュラを起点に、競技車両の設計思想や製造の現場、競技を支えるエンジニアの思考を取材・執筆。技術と競技のあいだにある「それを作る人たちの思考」に関心を持ち、現在は国内外のレース車両開発や人へと取材領域を広げている。

