質実剛健・実戦を見据えたマシンとチームの2024年は?【日本自動車大学校・東京オートサロン2024】
1月12日(金)から14日(日)に幕張メッセで開催されたカスタムカーショー・東京オートサロン 2024に日本自動車大学校(NATS)が学生フォーミュラマシン「FFN-12」を展示した。NATSは 2010年から参戦しているチームで、2022年大会では専門学校のチームで初めて総合3位を獲得。2023年大会では加速性能を競うアクセラレーションと耐久性能を競うエンデュランスの2種目で2位に入り、総合でもチーム史上最高の2位を獲得した。彼らが今回展示したFFN-12はスチールパイプフレームに、ハイコンプレッション仕様に変更されたヤマハ製 MT-07 エンジンを搭載、Hoosier製10インチスリックタイヤを履く。全体的にはシンプルに纏まったマシンで、空力部品はリアタイヤの前に配置された3枚の小さなウイングとエンジン下のアンダーパネルに留まっている。
上位を争うライバルたちが前後に大きなウイングやディフューザーを搭載する中で、『羽が付いていないのに速い』ことがNATS の特徴にもなっている。ライバルとの違いは細かいところにも見られる。ライバルたちがオリジナルパーツを製作するのに対して、既製品を選定している点だ。今回確認出来た範囲ではステアリングラックやステアリングコラム部分、ステアリングホイールが既製品だ。またブラケットや遮熱板の成形等細かいところの仕立てが整っている印象で、このあたりモータースポーツの現場へ学生を派遣する日本自動車大学校らしく、量産フォーミュラにも通じる作りをしている。
学生フォーミュラのマシンでは性能を優先してオリジナル部品を設計製作することが多いが、ワンオフ品が故障すると修復に時間がかかることもある。一方で、既製品は性能面では妥協が必要な部分もあるが比較的容易にスペアを持つことが出来て、修復により走れない時間を最小限にすることが出来るだろう。こうしたNATSの実戦、大会での速さを見据えたマシン作りは流石。
シンプルながら速さを有するこのマシンはロングランも強い。エンデュランスの上位6チームのタイムを比較しても圧倒的にタイムのばらつきが小さい。もちろん、レコードタイムを狙いに行ったチームやトラブルを抱えたチームとの比較は難しいが、それでもNATS の強さは間違いなさそう。NATSのドライバーは「(エンデュランスは)配点が大きく、22年の時に巻きかえしたこともあって、チームとしても大事にしていた」「大会前はロングの練習を結構やった、自前のコースもあってその準備はしっかり出来たと思う」と話す。
練習の中では熱ダレへの準備もして来たようで「熱ダレするとだんだんアンダー傾向になっていって苦戦した」「タレて来ると舵角も小さくしてカバーしていた」「車はフラットにすーっと曲がっていくようにセットした」「リアが出てくれるマシンにしている」とのこと。バネ設定やアンチダイブ、アンチリフトをつけるなどマシンの動きを小さくする方向で走りやすさを作り込んだという。
2019年大会の後コロナ禍を経て 2022年、2023年と全競技での大会(2021年は静的審査のみ)が開催されてきたが、2019年2022年 2023年の3大会でトップ10に入り続けているのはNATSだけ。2022年大会開催時、エコパのノウハウや大会参戦のノウハウが途切れて下位に沈むチームがいる中でも NATS は上位に入り、2023年もポジションを上げてきた。2024年大会は会場を Aichi Sky Expo(ASE)に移してコースレイアウトも変更になる。さらに現状ではASE での合同テストは難しいらしく、全てのチームが未知の状態で大会に臨む可能性もある。そうなると状況は 2022年大会よりも過酷だ。そんな状況においてNATSの持つマシンのクオリティと速さ、安定感は武器になる。優勝有力候補になるといっていいだろう。ただしそれには前提条件がある。それは彼らが『どちらのマシン』で参戦するかだ。
当初2023年大会へは日産のモーターユニットを搭載した EV マシンでの参戦を計画していた NATS だが、台上でのモーター制御に苦労し時間を要したようでICV(エンジン車)に計画を変更した。今年こそはEVで参戦するのか、ICVで優勝を狙いに行くのか。現状ではICVを選択することが濃厚と見られている。予てより彼らは総合優勝を目標としており、確実に狙える位置まで上がってきた。ここでEV にすると順位維持は難しいと見るのが妥当だろう。また東京オートサロン現地で聞かれた話は「1月中にベンチでモーターが回せたら・・・」というもの。モーターの制御に苦労する状況に変化が無いとするとICVを選択する可能性が高いのではないだろうか。もちろんそれ以外の可能性もある。ICV、EVの2台体制だ。ICVでポジションを維持しつつ優勝を狙う一方で、実戦でEV 開発を進めていくというもの。現地でも「理想は2台体制だと思う」という声も聞かれた。2024年、NATSの動向に注目だ。