軽快な動きで上位に食い込む

「確実なメリットも得られる」

2022年も活動制限が続く茨城大学は限られた時間で十分に走行を行うため,製作性,整備性,ドライバビリティ,耐久性に配慮した車両を目指し「三位一体の信頼-つくりやすい・乗りやすい・壊れにくい-」をコンセプトに掲げウイングレスマシンで挑んだ。茨城大学は上の2チームと少し異なり、これまで載せていたウイングを下ろしたチーム。「シェイクダウンが遅れることを予測し、製作時間、人数を必要とするエアロデバイスを排除することにした」とのこと。ただネガティブな面だけではないようで「重量削減,重心高低下,ヨー慣性モーメント低減の確実なメリットも得られる」「セッティング項目も絞られるので短期間でセッティングを詰めることができる」と限られた時間の中で完成度、信頼性を考慮した判断だったという。7月23日と比較的遅い時期のシェイクダウンだったが、大会までの1.5ヶ月で200km以上を走行、スキッドパッドのテストタイムもウイングを載せた2019年マシンと同等レベルまで上げられたという。8月のエコパ合同テストこそ参加していないものの、Twitterに上がったスラローム動画の動きはヒラヒラ感があり完成度の高さを感じた。

フロントの発動を狙ったというセッティングは「主バネ・ARB・内圧→キャスター角→Frトー角の順でセッティングを進めた」という。しかしここで今年大きな問題となったタイヤ入手困難の影響が彼らにも。「大会で履く7.5inch幅のタイヤを十分に入手できなかったため7.5inch幅タイヤを大会まで温存し,テストでは6inch幅のタイヤを使用していた」「6inch幅タイヤではFrRr共に綺麗に溶け、スキパ5s切りも見えていたが7.5inch幅を大会で装着したところ転舵ジオの影響でセッティングが狙いから大きくずれてしまった」とのこと。タイヤ幅違いの影響により操舵反力が増えRrが抜けやすい状況だったオートクロスに対して、エンデュランスでは安定方向にタイヤ内圧をアジャストしたというが今度はアンダーステア方向に。最終コーナーでどんどん曲がらなくなっていく様子が見られた。大会では本領発揮とは行かなかったようだが、ウイングレスマシンで一定の速さを見せた茨城大学だが今後について「エアロデバイスは速さを追求する上で検討が必要だと考えている」「高速コーナーはエアロデバイスがあった2019年の方が確実に速さがあったが、エアロデバイスなしでも設計やセッティング次第で十分な速さを実現できると感じている」「そして設計環境も以前と変化しており,活動制限も未だ受けているため搭載にはかなりの労力を伴います.チーム状況と2022年とエアロデバイスがあった頃のデータなどを比較し,今後搭載するかを検討したい」とのこと。

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【茨城大学 チーム総括コメント】
弊部にとって3年ぶりのエコパとなり,メンバーもほぼ全員が初経験でした.大会前に模擬車検等も受けられていなかったため,確実に車検を突破し動的審査でタイムを残すことを念頭に置いていました.堅実に戦い,様々な経験をすることができたので,次大会ではこの経験を基にエアロデバイスを含め,様々な検討をできればと思います.

「ウイングレスでどこまで行けるかいうのに挑戦していきたい」

これまで上げたチームが工数や予算等を理由にウイングを載せていないのに対して「ウイングレスでどこまで行けるかいうのに挑戦していきたい」と語ってくれたのは山口東京理科大学。今年のコンセプトは「リニアで刺激的な操縦性」とのこと。このチーム、雨の中オートクロスにマシンを出したのだがスピンをしてしまう。注目すべきはスピンの仕方。ウェットコンディションではフロントが浮きがちで、ブレーキロックすることも多い。スピンをするとしても出口でアクセルを早く開けてしまう、開け過ぎることによるケースが多い印象。これに対して山口東京理科大学のスピンはターンイン、巻き込む形でのスピンだった。ウエットコンディションでもフロントで回り込む動きを作れていると見る。

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これはドライになったエンデュランスでも同様で、2コーナーの進入でしっかり回り込む動きが見られた。「マシン作りのひとつの指標として、低重心を追い求める中で、ウイングはそれに反する物と考えている」「重心が低いことによって運動性能の向上させ、クイックな動きが可能であると思う」と話す通りターンインでのクイックさは彼らの持ち味だろう、その影響かリアが抜けやすい印象も受けるが曲がるマシンというのはそれだけで確かに「刺激的」だ。

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【山口東京理科大学 チーム総括コメント】
今年の大会は22人中4年生が2人のみだったので、本番の大会の流れがなかなか上手くいかなかった場面もありましたが、技術車検も初日で終了し、全動的種目において記録を残し、エンデュランスもしっかりと完走することができ、過去最高位を取ることが出来たので、下級生にはいい刺激になったのではないかと思います。

大会翌日からの1年という期間は全チーム同様に与えられる。もちろんこの期間で理想的なマシンが完成すればそれがベストだが、1年で足りないチームでは多年度に渡って段階的な開発を進める「3カ年計画」といった話も聞かれる。ただ既述の通り1シーズンで引退するチームもあれば、そもそも各チーム人員・予算・設備が異なるため個々の環境と目標に合致したリソースの配分をする必要がある。このリソースをどう配分するかがマシンの完成度、ひいては総合成績にも影響してくる訳だが、動的ブランク後の2022年大会はここでの采配が例年以上に大きく作用した印象だ。おそらくこの状況は来年も続くと見ている。今年シェイクダウン出来なかったチーム、車検を通せなかったチームは2022年大会の走行実績がない中で2023年に向けて計画を組み直して行く必要がありそうだ。その時、ウイングレスマシンで成績を残した彼らが1つのヒントになるかもしれない。